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熱くなれ! 魂のスイッチをONにする読書ガイド

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「読書のすすめ」という店名の本屋さんを知っていますか?

変わっているのは店の名前だけでなく、本の品ぞろえも普通の書店とはちがいます。
ありきたりの新刊は置かない方針で、店主が感銘を受けた本だけが大量に並べられているのです。

型破りな経営方針にもかかわらず、この書店は、東京都江戸川区篠崎で20年以上も続いています。

魂を目覚めさせる読書とは

書評集『魂の読書』(清水克衛・著/扶桑社・刊)は、「読書のすすめ」店主である清水克衛さんが、読めば「魂が燃える」という60冊をセレクトしたものです。

本当の自己啓発書とは、燃える本なのです。
読むと肚の底から心が燃えてきて、無性に何か動きたくなり、魂の目覚めのスイッチが入るものなのです。

(『魂の読書』から引用)

できれば「燃えるような恋をしたい」のですが、相手がいないので、代わりに「魂を燃やす」ことにしました。
最寄りの図書館に行って、手に入りやすかったものを3冊借りて、実際に読んでみました。

『学問のすゝめ』

著者である福沢諭吉は、ご存じのとおり1万円札に印刷されている人物であり、慶應義塾大学の創設者です。
本のタイトルも著者も有名ですが、わたしは通読したことがありませんでした。

『学問のすゝめ』が出版されたのは、1872年(明治5年)。当時の日本人の10人に1人が読んでいたと伝えられています。(当時の発行部数は約300万部)
その内容は、英語や科学的態度などの「実学」を身につける重要性はもちろんのこと、日本人にとっての「自由」「平等」「一身の独立」について説いています。
大政奉還や四民平等によって封建制度から解放された青年たちを、大いに発奮させたそうです。まさに魂に火をつけたわけです

「読書のすすめ」店主のオススメは『ヨコ書き 学問のすすめ』(川本敏浩・翻訳/ブックマン社・刊)です。現代語に訳してあるので読みやすいです。
全17章が収録されているのですが、書いてあることがまったく古びていないことに驚きました。

『言志四録』

型破りな本屋さん「読書のすすめ」店主は、日本の幕末期にシンパシーを感じているようです。わたしも同感です。

尊王や攘夷といった思想的立場を超えて、幕末期の志士たちが共通して読んでいた書物がありました。
それが『言志四録(げんししろく)』です。

著者の佐藤一斎は、江戸後期の儒学者なのですが、門下生の顔ぶれに驚かされます。
佐久間象山、横井小楠、勝海舟、吉田松陰、さらに孫弟子ともなると、高杉晋作、久坂玄瑞、木戸孝允(桂小五郎)、伊藤博文、ほか多数。
なかでも西郷隆盛はたいへんな愛読者であったそうで、『言志四録』から101条を厳選した『南州手抄言志録』を編纂するほどでした。

言志四録の原文は漢文体です。現代語訳のものを読んだほうがいいです。
わたしは『現代語抄訳 言志四録』(岬 龍一郎・翻訳/PHP研究所)を選びました。

内容は「民衆を導く者、人の上に立つ者とはかくあるべき」というものです。
若い人が読むよりも、これから管理職になる三十代以降のビジネスパーソンが読むべきでしょう。
明治維新において、幕閣・長州藩・薩摩藩のリーダーたちがそろって座右の書としていた本ですから、きっと役立つはずです。

『洗心洞箚記』

「せんしんどうさつき」と読みます。
この書名を知っているだけでも、かなりの歴史通だと思います。

『洗心洞箚記』の著者は、大塩平八郎です。
よく知られているのは「大塩平八郎の乱(1837年)」の首謀者という肩書きです。
その次に知られているのは、大坂町奉行所の元・与力(役人)だったこと。
さらに言えば、儒学者であり陽明学の研究者でした。

『洗心洞箚記』の「洗心洞」とは、大塩平八郎が役人を辞めたあとに開設した私塾の名前です。
「箚記」はノートという意味で、その内容は「陽明学」にまつわる読書録です。
陽明学とは、同じ儒学である「朱子学」をアップデートするために発生した思想です。

江戸幕府は、秩序を重視する思想である「朱子学」を正学としていました。
もう一方の陽明学は「朱子学に欠けている部分があるので、それを補う」という思想です。
本場である中国の「陽明学」は革命の思想ではありませんが、陽明学における「良知を致す」という思想は、ともすれば「直情のまま行動するのが正しい」という安易な理解をされることがあり、正義感にもとづく反体制的で突発的な行動をまねく傾向にあったそうです。

大塩平八郎の乱は、飢饉による食糧不足に苦しむ民衆のために挙兵した事件です。『洗心洞箚記』は、いわば「魂を燃やした男」が決起に至るまでを記録した本なのです。
それは単なる米騒動ではなく、島原の乱から数えて約200年ぶりに発生した内乱事件であり、徳川幕府の「終わりのはじまり」でした。
その30年後には、大政奉還(1867年)、戊辰戦争(1868年)へと発展していきます。

──というようなことを、『日本の名著27 大塩中斎』(宮城公子・編/中央公論社・刊)に収録されている『大塩中斎(平八郎)の思想』や、現代語訳の『洗心洞箚記』で学ぶことができました。

読みたい本は尽きない

幕末や明治期の話ばかりになってしまいましたが、今回ご紹介した書評集『魂の読書』には、それ以外の時代に著された「魂の目覚めのスイッチ」をONにしてくれる本の情報もあります。

『得手に帆あげて』(本田宗一郎・著/光文社・刊)
『非情のススメ 超訳 韓非子』(永井義男・編訳/辰巳出版・刊)
『不動智神妙録』(沢庵 宗彭・著 池田諭・翻訳/徳間書店・刊)

この3冊の書評を読んで興味がわきました。近いうちに取り寄せるつもりです。

(文:忌川タツヤ)

魂の読書

著者:清水克衛
出版社:扶桑社
幸せを求めたら不幸になるに決まっている。本当の成功法則は“魂"の成長をともなうものです。
そのためには、「問い」を見つけるための読書が必要なのです。
本のソムリエがマンガ、児童書から小説、実用書、思想書、古典まで縦横無尽に紹介!
巻末にブックガイド「世の中に流されないための60冊」を収録。

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