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「脳の仕組み」から冷静に考える「悩まない方法」

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杞憂=中国古代の杞の人が、天が崩れ落ちてきはしないかと心配したという『列子』天瑞の故事から、心配する必要のないことをあれこれ心配すること。取り越し苦労。杞人の憂え。(goo辞書より)

中田英寿氏の言葉

とあるビールのCMで、元サッカー日本代表の中田英寿さんがおっしゃるセリフが、すごく身にしみている。「世の中で無駄だと思うことは?」という質問に対して返すひとことだ。

「わからないことを心配すること。何十年後のこととか……。それよりも今頑張ろうと」

遠い未来の、まだ起きてもいないことについていくら心配しようと、今この時点でそれに対して何かできる人はいない。何が起きるのかもわっていないのだから、当たり前だ。しかし筆者には、その“遠い未来の、まだ起きてもいないこと”について思い悩んでしまう夜が定期的にやってくる。

以前フムフムの別のコラムでも書いたが、こういう時は最長2時間考えればそこでふっきれて、いかにどうしようもないことをしているかを確認できて、いわゆる杞憂という行いがいかに無駄であるかが納得できたところで帰結する。

絶えない悩みの根源とは?

ネットで調べてみると、杞憂という言葉で表現できるものに悩んでいる人たちに関するサイトは決して少なくないことがわかった。洋の東西を問わず、筆者に似た思いを抱きながら日々を暮らしている人たちはそれなりの数が存在する。日本・アメリカ・イギリスの悩み事相談サイトを合計10か所見てみた結果、悩みの根源は憶測と取り越し苦労に集約されるという意見が多かった。

この過程で、英米のサイトに“GAD”という言葉が繰り返し出てきた。日本語では、“全般性不安障害”という意味になるらしい。HELPGUIDE.ORGというアメリカのサイトに、次のような症状が示されている。

・心配事が常に脳裏に浮かんでしまう。
・不安感をなくし、心配するのを止める方法がない。
・望ましくない状況が場面になって思い浮かんでしまい、頭から離れない。
・何をしてもリラックスできない。
・集中力が持続しない。
・心配する気持ちでものごとが手に付かない。
・筋肉が緊張し、全身が痛む。

HELPGUIDE.ORGより引用

こうした具体的な症状が複数確認されたら、日本においても英米においても精神療法と薬物療法が勧められるレベルになる。ただ、ここまで行かずにとどめることができる方法がある。

悩み虫撃退のノウハウ本

どうでもいいことで悩まない技術(柿木隆介・著/文響社・刊)は、時として――筆者の場合は定期的に――頭をもたげる“悩み虫”を駆除するためのノウハウ本であり、GADまで陥ってしまう前にブレーキとして機能してくれる1冊でもある。

まずは本書の立脚点を明らかにしておきたい。

「つまりは、気の持ちようが大事!」といった精神論ではなく、脳や人体の仕組みから考え、理解し、その上でどう行動に移すか、どういう考え方を変えていくべきかを紹介していこう、というのが本書の内容になります。

『どうでもいいことで悩まない技術』より引用

小さなことにくよくよしないための方法論を語る本は、確かに精神論的なものが多い。しかし本書は、脳の機能面から心配の種を消していこうという神経科学の専門医ならではのアプローチで進んでいく。

日々の習慣で脳のクセを変えよう

柿木さんのアプローチについてもっと詳しく見てみよう。

人間の脳というのは、理由や理屈がわかると「納得できる」「安心できる」「満足できる」という非常に冷静で知的な機能を持っているのです。
そしてもう一つ、何より大事なのは、脳は日々の習慣によってクセが変わっていくということです。

『どうでもいいことで悩まない技術』より引用

この文章の意味を逆方向から汲み取ると、脳が「納得できる」「安心できる」「満足できる」という方向で働くように日々の習慣を変えていけば、脳機能という面から心配の種は消せるということになるのではないか。

感情論や精神論ではなく、脳の仕組みから「悩むことが無駄である」事実を指摘する方法論に強い魅力を感じるのは筆者だけではないはずだ。実例を盛り込みながら淡々と進む語り口はきわめて科学的であるのだけれど、読後感は宗教書のそれに似ている。

言葉足らずなたとえかもしれないが、科学と宗教はどこかでつながっているという実感がある。

(文:宇佐和通)

 

 

どうでもいいことで悩まない技術

著者:柿木隆介
出版社:文響社
日常生活には、イライラしたり、不安になったり、緊張したり、「悩むほどではないけれど、つい気にしてしまうこと」があふれています。そんな小さなことで、できれば悩みたくない。そこで本書では、その解決方法を「脳の仕組み」から考え、どのようなアクションを取るべきか、わかりやすく解説していきます。たとえば……
・イラッとしたら、まっさきにすべきことは?
・ケンカは「謝るが勝ち」なワケ
・不快な気持ちを整理するとっておきの方法
・優秀なビジネスマンがしているパニックを防ぐ方法とは
・モノを捨てると執着心が薄らいでいく理由
など、「つまりは気の持ちよう!」ではなく、日本を代表する脳科学の先生が、科学にもとづいたノウハウを紹介していきます。

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