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”青春”に思いを馳せる小説が読みたくなるとき

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日本と世界のマスコミは、エマニュエル・マクロン新フランス大統領が誕生したとき、彼の24歳年上の妻ブリジットさんに大注目した。15歳の男子高校生と39歳の女教師との恋愛、そして結婚なんて、映画みたいでいかにもフランスらしいからだろう。

初恋の人が“先生”という人は意外と多いかもしれないが、その青春の頃の一途な思いがずっと続くケースはやっぱり稀だし、皆が興味津々になるのはよくわかる。

恋愛至上主義の国では

ところが、フランスではマクロン新大統領の政策には興味はあっても、その私生活には興味なしという人が大半のようだ。ミッテラン前大統領やシラク前大統領に愛人がいても、サルコジ前大統領が就任まもなく離婚して、その後スーパーモデルと再婚しても、フランス国民にとっては「だから何?」という感覚。他人の色恋沙汰は自分たちの生活には関係ないから、どうでもいいと思っているようなのだ。

というか、恋愛至上主義のフランスでは、めずらしい恋愛をごく身近で目の当たりにするので誰も驚かないのかもしれない?

私も彼の地での子育て中には、フランス人の恋愛に関しては「え~っ!」と驚くことが何度かあった。

娘が中学生だったときには、クラスメイトだった男子生徒と女子生徒が、ある日突然、兄妹になってしまった事件(?)があった。父母会に出席していた、あるパパとあるママが恋に落ち、そのまま結婚。それぞれの子どもたちは、いきなりひとつ屋根の下で暮らすことになった。

大統領になったマクロン家の場合はマクロンと夫人の娘が同い年であり、同級生がいきなり父と娘になったわけだが、まぁフランスの場合はなんでもあり、驚く人はいないようだ。

懐かしき青春時代

さて、自分の高校時代を振り返ると、あの頃は“東京へ出る”ことしか考えていなかった。アンノン族だった私は東京でキャリアウーマンになることを夢見ていた。今、思うと地元の静岡にいてもキャリアウーマンにはなれたはずだが、当時は親から独立し、上京しなければならない!と強く思っていたのだ。

そして同じ夢を抱いて共に上京した同郷の女友だちと、泣いたり笑ったりしながら過ごした都会での青春の日々は私の中ではいつまでもキラキラした思い出だ。

で、懐かしさに浸っていたら、無性に青春小説を読みたくなり、書店「蔦文庫」を運営しながら、純文学を執筆し続けている秋山一之氏の一冊を選んだ。

進路』(秋野一之・著学研プラス・刊)は、青春をテーマにした小説。北海道に住む幼なじみの男女が家業を継ぐか大学進学かで揺れ、そしてすれ違ってしまう切ない青春物語だ。田舎から上京する若者の心理がとてもよく描かれていたが、それは著者自身の経験によるものだろう。

数々の経験が小説になっている

私は小説を読むのが大好きだ。暇な時間、特に電車の中では小説はなくてはならない。ときどき、物語にのめり込みすぎて降りるべき駅を通り過ぎてしまうこともあるくらいだ。

私も物書きだが、こういったコラムやエッセイは書けても、小説だけは絶対に書けない。それは小説になりそうな劇的な人生を送ってきていないからだと思う。

『進路』の巻末には秋野一之氏の経歴が書かれているが、北海道から上京し、ありとあらゆる職業に就いていたことがわかる。

ちょっと抜粋すると、昭和12年北海道生まれ、高校卒業後に上京。中央大学卒業後、20代で小説を書きはじめると同時に図書館司書の資格取得。さらに通信教育で、教職課程の単位を得、高校社会、商業、中学社会、司書教論の教員免許を取得。

また、東京教育大学教育学部を中退しているが、同校の寮費の問題で放学処分になり、民事訴訟を起こす。都内の簡易旅館や宿泊所で寝泊りしながら、アルバイトを多数経験。

30代は常勤社員生活が続き、結婚し、子どもも生まれ、また持ち家生活となる。そして出版元、蔦文庫を創り、数々の小説を出版。

40代では離婚、再婚も経験。50代では再び離婚。数社のセールスマン、ガードマンを経験、また、市の交通指導員も経験。

そして60代で再び結婚、自営業をしつつ、その後70代に入っても文芸創作を継続し、現在に至っている。

こういった様々な人生経験が、物語の随所に散りばめられいるからこそ、読者を引き込むことができるのだろう。

本書には『進路』と、もう160年代の大学紛争を背景にした『外風』の2作が収められている。

(文:沼口祐子)

進路

著者:秋野一之
出版社:学研プラス
書店「蔦文庫」を運営し、自ら秋野一之のペンネームで精力的に純文学作品の執筆を続けてきた著者が、過去の作品の中から青春をテーマにした小説をまとめなおし再刊した注目作! 表題作「進路」のほか、「外風」の2作収載。

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