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グリム童話に秘められたドイツの母親たちからのメッセージ

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グリム童話はドイツ各地で語り伝えられていた昔話をグリム兄弟が本にまとめたもの。最初は『子どもと家庭のメルヘン』というタイトルだった。

グリム童話が本当は怖いと言われるのは、最初は採集した話を忠実に表現していたため、残酷すぎるところがあったからだ。そのため、版を改めるたびに文章も改め、子ども向きに詩的に味わい深い話に仕上げられるようになった。

日本でもドイツでもお天道様は見ている

私は祖母から「いつだってお天道様が見ているんだからね」と言われて育った世代だ。
誰も見ていないからと悪いことをすると、お天道様はすべてお見通しだから、天罰がくだると信じてきた。

日本の昔話も、グリム童話に負けないくらい怖いと思うけれど、昔話が怖いのは、この天罰がくだったときで、それが残虐なシーンとなる。怖い目にあいたくなかったら、清く正しくあれという教訓が、数々の物語に込められているというわけだ。

ハーメルンからきた少女

娘がフランスの中学生だったとき、はじめてドイツとの交換留学を体験した。ドイツとフランスの学校間での交換留学はとても盛んで、娘が通ったパリ郊外の公立中学はドイツの公立校と提携し、互いの生徒を行き来させていたのだ。

13歳のドイツ・ハーメルンの少女、ナディーヌは“ネズミグッズ”のお土産をたくさん持ってわが家にやってきた。そう、ハーメルンはグリム童話の『ハーメルンの笛吹き男』の舞台となった街だ。

昔々、ハーメルンに大量発生したネズミに人々が困っていると、カラフルな服を着た笛吹き男が現れ、笛を吹いてネズミを退治してくれた。しかし、街の人々はお礼もしないどころか笛吹き男を街から追い出してしまった。その後、笛吹き男が再びハーメルンにやって来て、笛を吹くと今度はたくさんの子どもたちが消えてしまったというストーリー。

ハーメルンから子どもが消えた事件は昔に実際にあったことだそう。原因は諸説があるようだが、グリム童話では天罰がくだったことになっている。

さて、母親からグリム童話を語られて育ったというナディーヌはとても礼儀正しい少女だった。フランスの子どもと比べると、ドイツ人はとても繊細で、ある意味、日本人に近いメンタリティを持っていると感じた。

その後も、中高を通して何人かのドイツ少女がわが家にやってきたが、みんな良い子で礼儀正しかった。

それは、もしかしたらドイツの母親たちが子育ての中で、グリム童話を読み聞かせてきたおかげなのかもしれない? 

大好きな『ブレーメンの音楽隊』

動物好きのわが娘がいちばん好きな童話は『ブレーメンの音楽隊』だ。
年をとって捨てられた動物たちが幸せを求めてブレーメンに向かい、鳴き声でお化けに見せかけ悪い泥棒たちをやっつけるお話で、幼い娘にせがまれて何度も何度も読み聞かせていた。

グリム童話のおかげか、その後、ドイツびいきになった娘は交換留学でブレーメンの街を訪ね、“音楽隊の像”を見て、感激したと言っていた。

名作よんでよんで グリムどうわ4』(西本鶏介、桜井正明、はねたあゆみ・著、浅倉田美子、おざきえみ、かいちとおる・絵学研プラス・刊)は、『ヘンゼルとグレーテル』、『ブレーメンのおんがくたい』、『三人のしあわせもの』の3話を収めた絵本。子どもが理解しやすい文章とカラフルな絵で構成され、読み聞かせにぴったりだ。

本の解説で著者の一人である西本鶏介氏は、

グリム兄弟が昔話を採集するときにまず考えたのは、教育的であるよりも、自然とともに生きてきた人たちの心を伝えるものでなくてはならない、ということでした。そのため、お話のほとんどを女性たちから聞き集めています。当時、女性は子どもを産み、自分の手で育てなくてはなりませんでした。いいかえれば、家を守り、子どもを育てる母親の心をそなえた昔話がグリム童話です。母親の語りには、わが子への愛情がたっぷり込められています。子どもを喜ばせるテクニックがあります。グリム童話の魅力は、まさにこの母の心と豊かな語り口にあるのです。

(『名作よんでよんで グリムどうわ4』から引用)

と述べている。

話に込められたメッセージ

また本書では、千葉経済大学短期大学部こども学科教授の横山洋子氏が、3つの話に込められたメッセージや子どもに語りかけるときのアドバイスをしている。

『ヘンゼルとグレーテル』では、貧しさのために子どもを手放さなければならない悲しさを教え、家族で食事ができることの幸せを伝える。

『ブレーメンのおんがくたい』では、ロバ、犬、猫、ニワトリの4匹が協力すれば大きな力になることを伝える。

『三人のしあわせもの』では、頭を使えば、どんな物でも役に立ち、値打ちが上がることを教えてくれる。

よく知っているはずのグリム童話だが、そこにドイツの母親たちからのどんなメッセージがあるのかを考えながら読むと、また違った感想をもてるかもしれない。

(文:沼口祐子)

グリムどうわ4 ブレーメンのおんがくたい ほか全3話

著者:桜井正明(文) 浅倉田美子(文) 西本鶏介(絵) おざきえみ(文) はねたあゆみ(絵) かいちとおる(絵)
出版社:学研プラス
名作おはなし集。童話の基本ともいわれ、読み聞かせにも最適で人気の高いグリム童話をから「ヘンゼルとグレーテル」「ブレーメンのおんがくたい」「三人のしあわせもの」収録。

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