そうだ、ワーホリ行こう

大学を出て勤めた老舗ホテルは、ちょうど2年が過ぎた時に辞めた。
その時の所属はレストランサービス課だったんだけれど、ある日の夜勤シフトで突然何もかもが嫌になるというきわめて私的な理由で退社することになった。
30年前のNZワーホリ体験
翌日からワーキングホリデービザの取得手続きを始め、目指した先はニュージーランド。理由は、ちょっとした知り合いがいたからだ。
今から約30年前のNZワーホリの主流は免税店勤務だった。日本との時差は3時間で、独特のゆったり感に満ちたニュージーランドには、当時から日本人観光客が多く訪れていた。だから、日本語を話せる店員をどれだけ多く確保するかが免税店ビジネスの成否を決定するくらいの勢いだったのだ。
それまでにも海外で暮らしたことはあったけれど、働くことを目的にしたのは初めてだ。例のちょっとした知り合いの家に居候しながら地元の新聞を見て仕事を決め(ネットはまだ存在していなかった)、最初の週給(ニュージーランドは週に1回給料が支払われるシステムだった)でアパートの契約をして、そこから正式に新生活をスタートさせた。
ワーキングホリデーという選択
ワーキングホリデーという制度は、Wikipediaでは次のように説明されている。
2国間の協定に基づいて、青年(18歳~25歳または30歳)が異なった文化(相手国)の中で休暇を楽しみながら、その間の滞在資金を補うために一定の就労をすることを認める査証および出国管理上の特別な制度である。原則として、各相手国ごとに一生に一度しか利用できない。
現時点で、日本は16カ国とワーキングホリデー協定を結んでいる。筆者がニュージーランドに行った1980年代後半はオーストラリアとニュージーランド、そしてカナダしか選択肢がなかったが、今はかなり多くの行き先国を選べる。
人気ランキング上位5国は、2016年度資料によれば1位からオーストラリア、カナダ、イギリス、ニュージーランド、アイルランドという並びになっている。
なぜニュージーランドだったのか
ワーホリ制度を利用して海外に出る人たちが渡航先を決める理由はさまざまあるはずだ。
『英語力ゼロの29歳がニュージーランドに移住したら』 (長田雅史・著/学研プラス・刊)の著者、長田雅史さんは、2004年に初めてワーキングホリデーでニュージーランドに渡った。その長田さんは、とあるインタビューでニュージーランドを渡航先に選んだ理由について次のように語っている。
「大国や都会には興味がなかったので、オーストラリアよりも田舎の印象が強いニュージーランドに惹かれました。当初は世界一周の旅も考慮したのですが、ニュージーランド旅行中、自分があまりにも英語が話せないことに愕然として(笑)、この語学力では世界を回るのは無理だからワーホリにしようと決心しました。その時オークランドに滞在しましたが、自分には大きすぎる街だと思い、ワーホリ期間のほとんどをロトルアで過ごしました」
ロトルアというのは、大分県の別府市と姉妹都市協定を結んでいるニュージーランドの北島にある温泉地だ。長田さんは現地の小学校でのボランティア活動体験を通じて子ども達と触れ合い、カナダでもワーホリを体験した後、ニュージーランド移住を決めた。どうしてもニュージーランドに戻りたかった長田さんは、運よく仕事を見つけることができたという。
これって、結婚と同じかもしれない。長田さんにとっては、ニュージーランドが運命の国だったのだ。
マニュアル本でもあり、モチベーションを高める本でもある
『英語力ゼロの29歳がニュージーランドに移住したら』 は、実践的なマニュアルであると同時に、知らないものを見て体験することの大切さを教えてくれる一冊だ。小田実さんの『何でも見てやろう』とか、沢木耕太郎さんの『深夜特急』を読んだ時の思いにきわめて近いものが甦ってくる。
まえがきに次のような文章がある。
「海外に長く住む」というのは、旅行とはまったく違う側面を持ちます。その点でも色々なことを学びました。
『英語力ゼロの29歳がニュージーランドに移住したら』より引用
当たり前だろ、と言われてしまえばそれまでだ。でも、過ごす時間の絶対量が異なれば、見えてくるもの、感じることも違ってくる。これは、体験した人間でないとわからない。“ニュージーランドあるある”も満載だ。
・「Take Away」の文化が気持ちいい
・ニュージーランドが売春を合法化した理由に妙に納得
・日本では有り得ない!? ニュージーランドの朝のニュースが緩すぎる
・医療費は無料! でも手術待ちに1年!?
・やっぱり謎! 食器をすすがないニュージーランド人
この本を貫く思いは、あとがきに記された次の文章にあふれている。
ニュージーランドには、人生を変えてしまうほど不思議な力があると、僕は思います。実際にこの国と出会ってから僕の人生は変わりましたし、人が人らしく生活できる環境があります。
『英語力ゼロの29歳がニュージーランドに移住したら』より引用
現地の言葉が話せれば、それに越したことはないだろう。でも、もっと大切なことがある。長田さんにとっては、ニュージーランドという国がソウルメイトだったんだね。
長田さん、この本は、多くの人にきっかけを与えると思いますよ。
(文:宇佐和通)


英語力ゼロの29歳がニュージーランドに移住したら
著者:長田雅史
出版社:学研プラス
29歳で脱サラし、ニュージーランドに移り住んだ著者がつづる海外生活の驚き&不思議。価値観の違いや新たな気づき、現地の変わった習慣、移住しようと決めた理由、移住に必要なことなど、旅行誌では語られない住んだからこそわかるエピソードが満載です!
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