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親から「教師なんてやめなさい」と言われる時代

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元号が昭和だった頃は、学校の先生といえば「安定」と「社会的ステータス」を兼ねそなえた魅力的な職業でした。
しかし、近ごろは「あんな大変な仕事はやめなさい」と忠告されることも少なくありません。

スクールカウンセラーが書いた『教師の資質』(諸富祥彦・著/朝日新聞出版・刊)によれば、現代は「教師受難の時代」です。

受難(じゅなん)とは、「苦しくつらい思いをする」「災いを受ける」という意味です。
学校の先生たちを悩ませているのは、「いじめ」や「学級崩壊」や「モンスターペアレント」だけではないようです。

教師集団内の「スクールカースト」

中核となるリーダー的存在の若手教師のまわりに、それに追従する若手教師がおり、その"グループ"から外され孤立する若手教師がいます。

(『教師の資質』から引用)

原因は、文部科学省による「人事計画の失敗」です。
定年によって団塊世代が大量に退職したことにより、いまの教育現場には二十代~三十代前半の若い教師が多いのです。

スクールカウンセラーの諸富祥彦さんによれば「若い教師の集団は、子ども集団と似ている」そうです。
リーダー格の若手教師がおり、それに追従する若手教師たちがグループを形成するというのです。

職員室内カースト」は、やがて若手教師同士の「仲間はずれ」や「いじめ」に発展します。
これでは「教師同士のチームワーク」が機能するはずもなく、いじめ問題やモンスターペアレント問題に立ち向かうことができません。

弱音を吐けない教師たち

スクールカウンセラーの諸富祥彦さんによれば、学校の先生は「孤立しやすい」傾向にあります。

厚生労働省の調査でも、教師たちは、同僚や上司に「相談できない」と考える傾向が強いことがわかっています。

特に「上司・同僚」に相談できる人がいる、と答えたのは、一般企業では6割以上いるのに対して、教師では約14パーセントしかいません。
「管理職や同僚に相談できる相手がいない」と感じている教師が約86パーセントもいるのです。

(『教師の資質』から引用)

つまり、学校の先生は「弱音を吐く」のが苦手なのです。
悩みを解決できなければ、やがて心身に支障をきたします。

教師の受難「4つの要因」

(1)多忙さ
(2)学級経営、生徒指導の困難
(3)保護者対応の難しさ
(4)同僚や管理職との人間関係の難しさ

(『教師の資質』から引用)

要するに、現代の教師は「とにかく忙しい。心の休まる暇がない」わけです。

愛知県教育委員会が2010年4~6月に県立学校に勤める教員約1万1000人の勤務時間を調べたところ、国が過労死の危険ラインとする月80時間超の残業をしていた教員が3ヶ月の平均で13パーセントに上っていたことがわかったと言います。

(『教師の資質』から引用)

このように「教師の10人に1人が過労死リスクをかかえている」というデータもあります。
学校は企業ではありませんが、いま大きな社会問題になっている「ブラック企業」そのものです。

「心の振れ幅が小さいこと」が重要

疲れ果てている学校の先生に、子どもを任せても大丈夫なのでしょうか。
良い教師を見分けるための「資質」を、ひとつ紹介します。

教師の資質として、次に挙げたいのが、「情緒安定性」です。
(中略)
教師には、感動する力や、機敏に心を動かす力も必要ですが、否定的な場面に直面したときの心の揺れ幅が大きくなってしまうと、バーンアウトしやすくなります。

(『教師の資質』から引用)

スクールカウンセラーの諸富祥彦さんによれば、なるべく情緒が安定している先生のほうが、安心して子どもを任せることできるそうです。
たしかに「大声で怒らない先生のほうが、かえって恐ろしい」というのは、学生の共通認識です。

かつてテレビドラマでは「熱血教師」がもてはやされていましたが、実際の教育現場では「どんな状況でもある程度の冷静沈着さを保てる人物」のほうが、子どもにとっては良い先生になってくれるようです。

(文:忌川タツヤ)

教師の資質

著者:諸富祥彦
出版社:朝日新聞出版
大津中2いじめ事件でのずさんな対応、体罰、人権侵害まがいの暴言……教師の問題が取りざたされる今、本当に求められる資質とは何なのか。「教師を支える会」代表として、全国の学校の問題に取り組んできた著者が、今、最前線の教師像を説く。

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