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「サラリーマン山伏」という生き方

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同僚、部下、上司、得意先の人柄を、どれくらい知っていますか?

あなたが勝手に「凡人」と決めつけているだけで、プライベートでは、あなたが考えたこともないような「ユニークな生き方」の実践者かもしれません。

ウチのダンナはサラリーマン山伏』(はじめ・著/実業之日本社・刊)を読むと、つくづく「凡人」というレッテルは主観的な決めつけにすぎないと感じます。

現代に受け継がれる「山伏という生き方」

漫画家「はじめ」さんの夫は、会社員でありながら週末には「山伏」として本格的な修行をおこなっているそうです。

そんな人が実在するなんて、考えたこともありませんでした。

ところで、「山伏(やまぶし)」とは何でしょうか。
実際に会ったことがありますか?

テレビの時代劇やニュース映像で見かけるときは、白装束をまとっているイメージがあります。
「虚無僧(こむそう)」と同じで、現代ではあまり見かけない人たちです。

山伏とは何か?

山伏とは、修験道(しゅげんどう)を実践している人のことです。

インドで生まれた仏教に、中国の儒教や陰陽道、日本の神道や民間信仰が混じって、日本独自の山岳信仰になったわけです。

(『ウチのダンナはサラリーマン山伏』から引用)

つまり、修験道とは「神仏習合の宗教」です。

山伏になるためには「得度(とくど)」が必要です。
得度とは、仏教における「出家」のことですから、山伏は「お坊さん」でもあります。

ただし、修験道は「半僧半俗」が基本です。
これは、開祖である役小角(えんのおづぬ)が、在家信者であったことから、それにならっているためです。

俗世にありながら信仰にも勤しむ「在家信者」の選択肢のひとつが、今回ご紹介している「サラリーマン山伏」というわけです。

山伏修行は命がけ!

『ウチのダンナはサラリーマン山伏』というタイトルからは、お気楽な印象を受けます。
しかし、サラリーマン山伏すなわち週末修験道とは「命がけ」の信仰なのです。

峻険な山道を踏破する「奥駆け」
大岩壁の上からロープで体をくくられて突き出される「覗き」
唐辛子入りの煙で攻められる「南蛮いぶし」
験(げん)を高めるための「滝行」や「火渡り」

(『ウチのダンナはサラリーマン山伏』から引用)

山伏の修行は厳しいものであり、なかには命を落とした修験者もいます。
修験道における命がけの厳しい修行は、擬死再生(一度死んだようになって新しい力を得て生まれ変わる)という目的があるのです。

山伏づくしの恋人時代

女性漫画家の「はじめ」さんが、いまのダンナさんと出会ったときには、もうすでにダンナさんは山伏でした。
デートコースは、当然のごとく修験道にゆかりのある場所をめぐります。

たとえば、お不動さん参りです。開祖である役小角が「不動明王の生まれ変わり」だと伝えられているからです。
東京の高幡不動尊金剛寺、千葉の成田山新勝寺などに行きます。

山伏のイメージといえば「法螺貝(ほらがい)」もあります。
大きな巻き貝を吹くと「ぶぉぉぉ~」となるアレです。修験道の儀式にもちいるので、山伏にとっては必須科目だそうです。
恋人時代の「はじめ」さんは、ダンナさんにつきあって法螺貝を吹く練習をしていました。
山伏仲間のあいだでは、東京の「皇居外苑」が練習場として有名だそうです。

結婚式も、ダンナさんの意向どおり「仏前式」になりました。
結婚指輪ではなく「念珠」の交換です。

夫の生き方に付きあわされる妻のホンネ

『ウチのダンナはサラリーマン山伏』を読んでいると、なにもかもダンナさんの思いどおりになっています。
はたして、妻である「はじめ」さんに不満はないのでしょうか?

たしかに「山伏としての活動費が家計を圧迫する」などの苦労はあるようですが、むしろ、感謝しているようです。
ダンナさんにつきあって「火渡り」や「神山の登拝」をおこなうことにより、苦しみを乗り越えるための忍耐力がついたからです。
それは「突然のリストラ」や「出産」に役立ったといいます。

山伏が実践する「修験道」は、険しい山岳に分け入り、あえて困難にたちむかう信仰です。
いま困難をかかえている人にとって、もしかすると「サラリーマン山伏」という生き方が参考になるかもしれません。

(文:忌川タツヤ)

ウチのダンナはサラリーマン山伏

著者:はじめ
出版社:実業之日本社
山伏とは「山野に起き伏して修行するお坊さん」のこと。天狗の元になったくらいだから、とっくにいなくなったものだと思っていたら…いるんです! しかも東京のコンクリート・ジャングルに! 修験道オタクが高じて、週末だけ山伏になったサラリーマンと結婚! あのキモカワキャラ『あおくび大根』の作者がおくる、究極のバチあたりコミックエッセイ!

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