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誰かを愛したら、靴をみがこう、ただひたすらに、みがいてみよう

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もし、あなたに愛しい人ができたら、どうやってその気持ちを示しますか?
一日に、何回も「大好きよ」と、囁く人もいるでしょう。
おいしいお弁当を作って、そっと手渡す人もいるかもしれません。
いえいえ、そんなまだるっこしいことはしていられないと、「今度のお休みに旅行しませんか?」と、誘ってみたりして・・・。
どれが正解で、どれが間違いということはありません。
それぞれがそれぞれの方法で、愛を示せばいいのだと私は思いますし、実際、今までそうしてきました。
けれども、ここでひとつの提案をしたいと思います。
ユニークで、真心がこもった、他人への愛の示し方のひとつとして、「靴みがき」を愛のテクニックに加えて欲しいのです。

靴みがきは一種の魔法?

大好きな人の心をつかむには、料理が一番と教えてもらったことがあります。
確かに、「胃袋をつかむ」というのは、大切なことです。
けれども、「靴をみがく」という行為には、胃袋をつかむ以上の力があると、私は思っています。
嘘だと思ったら、恋人にプレゼントを渡すように、「靴をみがかせて」と、頼んでみましょう。 そして、アパートに遊びに来た時などに、彼が(彼女が)、テレビを観たり、眠っている間に、靴をピカピカにしてあげるのです。きっと驚きながらも、喜んでくれるでしょう。
誰にとっても、足元は大切です。
けれども、多くの場合、靴はくたびれています。
毎日の通勤でふまれ、傷つき、いたんでいるものでしょう。
靴だけではありません。 持ち主の心も、同じように、疲れ、細かな傷がつき、悲鳴をあげているのではないでしょうか?
けれども、きれいになった靴はまるで魔法のように、彼の(彼女の)心を癒し、透明にしていくものだと思うのです。

40年モノの靴をめざして

&BOOKS  20年はける靴みがき』(古川雅子・著/朝日新聞出版・刊)を読むと、靴みがきが持つ不思議な力を知ることができます。
本書に登場する、靴みがきを教えることを仕事としている明石優さんは、靴をケアすることの大事さを説き、20年履ける靴のみがき方を教えてくれます。
大事に心をこめてみがけば、20年どころか「40年モノ」も可能だといいます。
それも、そんなに難しいことをするわけではありません。
特別なブラシを使うとか、高価なクリームを使うわけでもない。
ただ丁寧に、忍耐強く、できれば楽しくみがけばいい。

3つの工程さえ守ればいい

靴みがきはお化粧に似ているといいます。
朝、起きたら、まずは洗顔して汚れを落とし、次に化粧水をつけて、乳液を塗り、保湿し、その後、お化粧という手順をとるでしょう?
この3つの工程をそのまま靴に施せばいいのです。

1 リムーバーを使って靴を「すっぴん」に戻す。
2 乳化性の栄養クリームで「保湿」をする。
3 ワックスを使って表面を整え「お化粧」をする

すると、あらあら不思議、摩訶不思議。
靴は息を吹き返し、ふっくらきれいによみがえるというではありませんか?

靴と語り合う喜び

ものは試しと、玄関にころがっている夫が脱ぎ捨てた靴をみがいてみました。
彼はどうやったら、靴をここまでズダボロにできるのか?と、思うほど、いたんだ靴を履いています。
もうゴミ箱いきと思うほどの状態だったのに、丁寧に汚れをふいて、クリームを塗り、ちゃちゃちゃとブラシを動かしただけで、見違えるようになりました。
同時に、心の疲れや日常に対する彼の怒りを感じ、「あぁ、毎日、働きにいくのは大変だな」と、理解してあげられるようになった気がします。
結局、靴をみがくということは、相手への思いやりを育て、自分自身をもみがくことになるのでしょう。

靴をみがくと物語が生まれる

『&BOOKS  20年はける靴みがき』には、靴をみがくテクニックだけが記されているわけではありません。
著者の靴みがきの講座に集まった生徒さんたちが、最後の授業で行う「誰か大切な人の靴をみがく」という課題を果たす様子が記されています。
ある人は先輩の靴をみがき、ある人は再会した親友が披露宴で履く靴をみがきました。
そして、みがいた靴を手にして記念撮影をします。
その顔が皆、とてもいい。
恥ずかしそうだったり、にこにこしたり、表情は様々ですが、どの人も、何かをしてもらうより、何かをしてあげる方がより幸福だと証明するような顔をしているのです。
たかが靴みがき、されど靴みがき。
靴みがきからうまれる物語をひとつでも多く紡ぐために、私もこれからはせっせと靴みがきに精を出すことにいたしましょう。

(文・三浦暁子)

&BOOKS 20年はける靴みがき

著者:古川雅子
出版社:朝日新聞出版
自由大学の講座「20年履ける靴に育てる」で、靴みがきの魅力にはまった9名の生徒たちによる、珠玉のフォトストーリー。

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