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「選ばれる人」の共通点とは?

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2017年1月25日。日本出身力士としては1998年の若乃花19年ぶりに、第72代横綱稀勢の里が誕生した。
伝達式での口上は、「横綱の名に恥じぬよう精進いたします」というごくシンプルなものだった。後のインタビューでご本人がおっしゃっていたところによると、ちょっと噛んでしまったらしい。

19年ぶりの日本出身横綱が卒業文集に残した言葉

横綱になると必ず手にすることになる横綱免許状には、「品格力量抜群につき横綱に推挙す」という一文がある。まあ、力量については察しがつく。誰よりも強ければいいんだから、話は簡単だ。でも、横綱の品格って何だろう?

前述の通り、横綱免許状にも「品格力量」という順番で記されているので、力量より大切なものかもしれない。

相撲通として有名な人たち―元NHK相撲中継実況アナウンサー杉山邦博さん、デーモン小暮閣下、漫画家やくみつるさんをはじめとする多くの人たち―の意見を総合すると、取り組み相手を含める形での勝負に対する姿勢、あるいは態度というキーワードが浮かび上がってくる。

筆者も相撲は大好きだが、横綱の品格についてここできっちり定義できるほどの見識はない。ただ、横綱昇進にともなって各局のワイドショーで紹介される稀勢の里関のエピソードの中に気になるものがあった。中学の卒業文集に、こんな言葉を記している。

「天才は生まれつきです。もうなれません。努力です。努力で天才に勝ちます」

中学生が、その場の空気でちょっとかっこいいことを言いたかっただけかもしれない。でも、こういう気持ちが横綱にふさわしい品格の基盤の一部となったとしても不思議はないと思うのだ。

グラミー賞史上初の3冠2回達成シンガーのスピーチ

2017年2月13日。ロサンゼルスのステープルズ・センターで行われた第59回グラミー賞で、イギリスの女性ソウルシンガー、アデルが2012年に続き史上初2度目の主要3部門(年間最優秀アルバム、年間最優秀レコード、年間最優秀楽曲)独占を達成した。

この夜アデルが行った〝ビヨンセ愛〟にあふれる最優秀レコード賞受賞スピーチがあちこちで大きく取り上げられている。

「ビヨンセこそ私の人生における最優秀アーティスト。ここにいるアーティスト全員があなたを尊敬しています。あなたは私たちの光。私自身、私の友だち、私のアフリカ系の友だちの素晴らしいお手本。みんなあなたのおかげで主張することができています。愛しています。ずっと昔から、そしてこれからも」

涙声で訴えるアデルのスピーチを聞いていたビヨンセも、目に涙を浮かべながら「アイ・ラブ・ユー」と言っていた。

選ばれる理由

稀勢の里関にしても、アデルにしても、横綱審議会やナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンスに〝選ばれる〟立場にある人たちだ。そして、選ばれるということには、きちんとした理由がある。

『「選ばれる人」の気遣い』(佐野昭子・著/CCCメディアハウス・刊)は、人から選ばれるということについて、そしてより大切な〝選ばれるには何が必要か〟についてつまびらかにしていく。

12年間キャビンアテンダントとして勤務した後、社員研修や講演、セミナー、大学の講義といったステージで活躍した著者の佐野さんは、大きなミスコミュニケーションを回避する絶対的なキーワードを明記している。これは営業職から接客業、そして横綱にもグラミー賞歌手にも共通するものかもしれない。

それ(ミスコミュニケーション)を防ぐキーワードは、「ホスピタリティ・マインド」、つまり「慮る心」です。
相手を慮ることができたなら、人間関係のトラブルが減るだけでなく、その後の自分の人生も大きく好転していくことになります。

『選ばれる人の気遣い』(佐野昭子・著/CCCメディアハウス・刊)より引用

選ばれる人たちは、そもそも選ばれようとは思っていないのかもしれない。少なくとも、選ばれることを意識して行動することはないだろう。決して構えることなく、ごく自然な形でさまざまな人を慮る心が、選ばれるために必要な流れを生み出していくのだ。

ホスピタリティ・マインド

話をもう一度相撲に戻す。第55代横綱北の湖は、幕内通算804勝247敗という記録を残し、〝憎らしいほど強い〟と形容された。その北の湖は、対戦相手を土俵下に突き落としても、投げて転がしても、手を貸して起こそうとはしなかった。そんな態度が不遜に見えたのか、一部から品格を問う声が上がったことがある。こうした空気に対し、北の湖関は次のような言葉を返した。

「若い頃、自分が負けた時に手を貸されたことがあったんです。その時、恥かしくてたまらなくなった。負けた相手に情けをかけられるなんて、ある意味、屈辱です。だから私は、勝っても相手には一切手を貸すことはしませんでした。それは、相手にとって失礼にあたるものですから」

これもまた横綱の品格にふさわしい一面―ホスピタリティ・マインド―の一形態ではないだろうか。

(文:宇佐和通)

「選ばれる人」の気遣い

著者:佐野昭子
出版社:CCCメディアハウス
「選ばれる人」とは……一緒に仕事をしたいと思われる人、苦しくても一緒に頑張れる人、その人がいると不思議とプロジェクトがうまくいく人。元日本航空CAが教える、会社で思いどおりの評価を得る方法。選ぶのは「相手」、選ばれるのは「あなた」です。

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