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ぞっとするほど激しい恋文を書いた美女、その名は柳原白蓮

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柳原白蓮という名を聞いたことがありますか?
華族の出身で、若くして伯爵家に嫁ぎ、男の子をもうけながらも、離婚。
その後、九州の炭鉱王伊藤伝衛門に嫁ぎ、筑紫の女王とまで呼ばれた淑女です。
彼女は豊かな文学的才能を開花させ、富豪の夫人として、文化サロンを主宰し、何不自由のない生活を送ります。いえ、送っていると、思われていました。
しかし、その実情は、歳が離れ、生まれも育ちも違う夫との不和に苦しむ、一人の不幸な女性だったのです。
けれども、彼女は恋に落ちます。
相手は7歳も年下の宮崎龍介、まだ学生ながら、社会の変革を夢見る熱い青年でした。

世にいう白蓮事件

タレントのベッキーが、不倫したとか、嘘をついたとか、いや、もう許されて復帰したとか、騒ぎになりました。
姦通罪のない今の日本でも、やはり不倫は仕事や生活のすべてを捨てる覚悟が必要だと、考えこむ毎日でした。
まして柳原白蓮の場合、今から100年も前のことです。
大富豪の令夫人と、まだ若い男性との道ならぬ恋。
それも、白蓮は身ごもって駆け落ちしたというのですから、まさに命がけ。必死だったのです。
新聞紙上に妻・白蓮から夫・伝右衛門にあてた絶縁状が掲載されるや、伝右衛門からも反論が寄せられるなど、今の言葉でいえば、ドロ沼化した離婚劇。
現実にこんなことが起こったとは信じられないような激しさだと言えましょう。

娘だから理解できる白蓮

2014年のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」には、白蓮をモデルとする「葉山蓮子」という女性が登場しました。仲間由紀恵が演じた人です。
さらには九州の飯塚市には伊藤伝右衛門が白蓮のために建てたという豪壮な屋敷があり、一般に公開されています。私も見学に行きましたが、どんなに贅を尽くされても、愛すことのできない男と暮らした白蓮の悲しさと、同じく、どんなに頑張っても愛を得ることができない伝右衛門の悲しさに満ちた家でした。
私はこれまで柳原白蓮に興味を持ち、彼女ゆかりの本を読んだり、テレビを観たり、彼女が暮らした九州に足を延ばしたりしました。
歴史を騒がせた人だけに、彼女を主人公とした著作や番組は多く、とてもここには書ききれないほどです。
けれども、白蓮の娘である宮崎蕗苳の『娘が語る白蓮』(河出書房新社・刊)はまだ読んだことがありませんでした。
迂闊だったと反省し、今回、読んでみてたいそう驚きました。
白蓮から直接聞いた話や晩年の様子など、愛に満ちた一生の秘密が見事に描かれていたからです。
人の一生は家族だからこそ書けるものと、家族だから書くことができず、踏み込みが不足するものとがありますが、『娘が語る白蓮』は娘だからこそ紡ぐことができた特別な作品だと思います。

ぞっとするような恋文

白蓮は伝右衛門にあてた絶縁状で知られています。
勇気ある女性でなければ書くことができないものでしょう。
残酷といえば残酷です。一度は夫になった人に恥をかかせることになるのですから。
けれども、白蓮が恋人である宮崎龍介にあてた恋文は、絶縁状以上に激しく、ぞっとするほどの妖気に満ちているのです。
娘として、母が父にこのような恋文を書いたことを世に知らせることに迷いもあったに違いありません。
けれども、この恋が本物だったと知っているからこそ、娘としては胸を張って公表したのでしょう。

ちょっと長くなりますが、引用します。1920年5月30日の書簡です。

否、それよりも もっと恐ろしいことをやるかもしれない 私にもし悪魔的の処があれば それは皆男が 教えたのです (中略) 私は貴方を信じてますよ わかりましたか(中略)
あなた決して 他の女の唇には手もふれては下さるなよ 女の肉を思っては下さるなよ あなたはしっかりと 私の魂を抱いていて下さるのよ きっとよ (中略) こんな怖ろしい女もういや いやですか いやならいやと早く仰しゃい さあ何とです お返事は?

(『娘が語る白蓮』より引用)

受け止める男もすごい

このように激しい恋文を受け取っても、びびらずにいた宮崎龍介もすごい人物だと思いませんか?
彼は自分が一生、スキャンダルを背負って生きていかねばならないと覚悟していたはずです。
先がどうなるかわからない恋。
気の弱い男なら、逃げ出したくなったことでしょう。
けれども、彼は逃げませんでした。
お嬢さん育ちの白蓮をしっかり受け止め、歌人としての活動を助け、晩年、病気のため、目が見えなくなった妻のため、生活のすべてをささげ、杖となって生きたといいます。
柳原白蓮は宮崎龍介がいたからこそ、最後まで気高くいることができたのだと思います。
大正三美人に挙げられる白蓮の美貌は、晩年になっても失われることはなかったといいます。
これからは、白い木蓮が咲いたら、柳原白蓮として生きた宮崎燁子とその夫の宮崎龍介を思いながら見上げることにいたしましょう。

(文・三浦暁子)

娘が語る白蓮

著者:宮崎蕗苳(著) 山本晃一(編)
出版社:河出書房新社
ドラマよりも劇的! 愛娘が語る「柳原白蓮」の真実。村岡花子との交友、「白蓮事件」から、夫・宮崎龍介の「密使事件」まで。最愛の息子の戦死を経て、平和運動に身を挺した、愛の生涯! 唯一の公式白蓮伝!!

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