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壁を乗り越えるたくましい子どもを育むアートの使い方

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異国育ちの娘は言葉がとても遅かった。
日本人家庭でも一歩外へ出れば外国という環境が日本語をも不自由にした。
3歳を過ぎても単語は出るものの会話が成り立たたずとても心配した。当時、娘は絵をたくさん描いていた。喋れないもどかしさをクレヨンに託し、必死で自己表現してたのかもしれない。

ベビーシッターは版画家だった

娘は言葉が遅かっただけでなく、遊び方もちょっと変わっていた。公園へ行っても、他の子どもたちと滑り台やジャングルジムや砂場で遊ばず、すみっこで小石や砂利を集め、小川や、雨上がりなら水たまりにポチャンと投げ入れて遊んでいた。放っておけば1時間でもそれを繰り返す。親の私ですら、ちょっと変?と思ったくらいだし、公園のママ友たちからは「おたく娘さん大丈夫かしら……?」などとと言われていたのだ。

しかし、たったひとりだけ「いや、カリン(娘の名前)はアーティスティックなんですよ」と言ってくれた人がいた。版画家で副業でベビーシッターをしていたリンさんという女性だ。ときどき娘の面倒をみてくれ、娘も彼女にとてもなついていた。

「投げ入れる小石の形によって水たまりにできる波紋が微妙に変化するんです。それを観察するのがおもしろいんだと思います。私もカリンと一緒にも小石を投げていて楽しかったですよ」

私はこの言葉にどんなに救われたことか。そして、アーティストは子どもをみる視点が違うのだなぁと感心したものだ。

アートが子どもをたくましくする

画家であり、タレントでもある城戸真亜子さんはアートスクールも主宰している。さらに、子どもアートのコンクールの審査員もしているが、そこで評価されるのは上手に仕上げられた作品ではないのだそう。いい作品として選ばれるのは、子どもの声が聞こえてきそうなもの、画面からはみ出しそうなエネルギーや感情に満ちた作品だという。

子どもはアーティスト 心を育てるアシスト50』(城戸真亜子・著学研プラス・刊)は、アートの力を子育ての中で活用する方法を親切に丁寧にアドバイスしてくれる一冊だ。

アートは脳と心を柔軟でたくましくしてくれる強い味方です。(中略)自分で作っていくところにおもしろさがあるため、問題解決能力が身につき、子どもたちのなかでたくましさが育まれます!

(『子どもはアーティスト 心を育てるアシスト50)』から引用)

絵は感情を表現するツール

子どもが絵を描きたくなるのはどんなときなのか?

それは「感動したとき」だと城戸さんは言う。都会育ちのご自身が小学1年生だったある日、一羽のキジバトがベランダに舞い降り、その美しさに目を奪われた。彼女は手元にあったお菓子の包み紙に色鉛筆で夢中でデッサンをしたそうだ。その動機は3つ。

1、不意の訪問者に驚いたから

2、その姿がめずらしくてきれいだったから

3、そのことを母に伝えたかったから

そう、「感動」と「誰かに伝えたい気持ち」が絵を描くきっかけになるのだ。

とはいえ、ただ待っていてもハプニングはそうは起こらない。

そこで、城戸さんはアートスクールに集まる子どもたちのために、さまざまなカリキュラムを準備しているそうだ。

たとえば、教室にビニールシートを敷き、生の魚をまるごと数尾、モチーフとして置く。すると普段は料理された切り身しか見ることのない子どもたちは大興奮で、触ったり、においをかいだりするのだそう。そして、その刺激が描くパワーになっていく。

描くためにふれることで、脳や心に刺激を受け、表現したい欲求のみならず、もっと知りたい、学びたい欲求などが同時にわき起こってくるのです。

(『子どもはアーティスト 心を育てるアシスト50』から引用)

ピカソもなぐり描きをしていた?

パリのピカソ美術館に絵を習っている知人と出かけたときのことだ。展示されている数々の素晴らしい作品にはため息の連続なのだが、その中に、これはどう観てもなぐり描き?と思われる一枚があった。新聞紙に“へのへのもへじ”のようなものを描いた作品だった。

「手元にあった新聞紙に、わずか数秒でなぐり描きしたみたいね? ピカソが描けば、こういう絵も名画になっちゃうのよね」と知人は呟いていた。

さて、城戸さんは、子どもが壁を乗り越えるたくましさを育てるために、なぐり描きをすすめている。

気負わないこと、萎縮しないことは、実力を発揮するためにとても大切なことです。(中略)アスリートの柔軟体操やウォーミングアップに当たるものこそ、<なぐり描き>だと思っています。手や足を使って、ぐちゃぐちゃと自由な線や面を描いているうちに、手首がほぐれ、筆や絵の具を自由にあつかうことができるようになってきます。

(『子どもはアーティスト 心を育てるアシスト50』から引用)

心に浮かびあがってきた色や形をなぐり描きしているうちに、美しい作品にできあがることもあるという。

自分より大きな作品で柔軟な発想力を養う

また、城戸さんのアートスクールでは、子どもの背丈よりも大きなオブジェ作りにも挑戦させているそうだ。

大きな素材を扱わせると、作品のできばえに関して不安を覚える子どもは少ないのだとか。

大人は先に設計図を作ってそれに従って組み立てていくが、子どもは違う。その都度、目に映った素材から刺激を受け、新たなイマジネーションを追加していく。

「計画どおりではなく、柔軟な発想が次々にわき起こり、それを作品に反映させていく。」という思考こそ、アーティストの理想とするクリエイター型人間の条件です。これは図画工作だけでなく、算数にも、作文にも科学にも生かされる柔軟な思考形態です。

(『子どもはアーティスト 心を育てるアシスト50』から引用。

本書では、この他にもアートを通じて子どもの感性を豊かにしていくアドバイスが盛りだくさん。子育て中のパパとママに是非、読んでほしい。

(文:沼口祐子)

子どもはアーティスト 心を育てるアシスト50

著者:城戸真亜子
出版社:学研プラス
子どもが本来持っている柔軟で豊かな感性と表現力を最大限に伸ばす。著者が主宰するアートスクールで実践している取組みや画家として体験してきたことをもとに50のアシスト術を紹介。「好みの色しか使わないときは?」などのよくある悩みや疑問にも答える。

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