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1万ほどの、気の利いたひとこと

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最近、日本人でも外国人でも、名前がスムーズに出てこないことがある。
誰でも知ってるはずのハリウッド俳優とか、ちょっと前に売れてた芸人さんとか、とにかく出てこない。スマホで調べればすぐじゃん、と言う人もいるだろう。でも、それじゃ達成感が全くない。この間も、奥さんと車で自宅を出てから横浜のIKEAに着くまで、さんざん悩まされてしまった。

お笑いコンビの名前が出て来ない

出てこなかったのは、ちょっと前にテレビでよく見たコンビの名前。二人とも鉢巻をしていて、一人が臼、一人が杵を持っている。わかる人は、もうわかりましたよね? でも筆者夫妻といえば、ネタを忠実に再現して、最後の「ありがとうございました」の前にコンビ名を言う時のリズムを思い出しても、名前がどうしても出て来なかった。

こうした状況は、文章を書くという作業においても往々にして起きる。筆者は書くことが仕事なので、原稿の文字数に応じての起承転結の書き出しとか、マクラになりそうなフレーズとかを可能な限り多くストックしておくよう意識している。ところが、これというひとことがどうしても出ない時がある。人名とは違うパターンのもどかしさだ。しっくりこない言葉ばかり浮かび、確実な打感がある言葉やフレーズを捕まえることができない。

文章は自分の投影じゃないだろうか

こうなると、考えれば考えるほど気ばかり焦る。何を書いてもどこかで使った言葉のような気がして、確認作業に時間を取られてしまい、文章そのものを書き進めることができなくなってしまう。

起承転結を付けて一定量の文章を書くことが必要な場面がある仕事は、意外に多いと思う。いや、こう言う。どんな仕事でも、文章を通じて意思を伝えるという作業は欠かせないのだ

文章を書くというのは、そもそもクリエイティブな作業であるはずだ。そしてその過程には、少なくとも自分だけは納得できるオリジナリティを持たせたい。どんな種類の文章であれ、読んだり聞いたりした覚えがある言葉を使うのはできるだけ避けたい。

文章は自分の投影であり、自分というもののあり方を示すひとつの方法であると思うからだ。

〝ジャスト・ライト〟なひとことを見つけ出すための最適なツール

そういう思いが形になった一冊が『ことば選び実用辞典』(学研辞典編集部・編/学研プラス・刊)だ。

実際手に取ってみる。
思っていたよりずっと小さい。厚みも、昭和37年生まれの筆者が中学校時代に初めて買った入門レベルの英和辞典と同じくらいだろうか。実用性を強く意識した辞典という性質は、まえがきの文章からも推し量ることができる。

文章を書こうと思ってペンを取ったり、キーボードに向かったとき、言いたい言葉が出そうででてこない、という経験はありませんか。または、よりよい表現を使おうと思って、あちこち国語辞典を引いた経験など…。本書はそんなときのために、少しでも適切な言葉や気のきいた表現を、簡便に見つけられるように作られた類語辞典です。

『ことば選び実用辞典』より引用

前面に押し出されているのは国語辞典という体裁なのだが、本質は類語辞典だ。意味を調べるだけではなく、縦方向にも横方向にも広げてボキャブラリーを増やしていくことができる。

毎日読みたい

シソーラス=類語辞典という機能面はもちろん、大きさと厚さが絶妙だ。ちょうどスマホケースくらい。これなら、片手で楽にページを繰ることができる。この大きさなら机のどこに置いていても邪魔にならないし、常にバッグの中に入れて持ち歩いて、必要な時にすぐ取り出すことができる。

レポートであれ、手紙であれ、読書感想文であれ、お礼状であれ、文章を書く機会は少なくない。書く文章に、少しでも自分らしさを意識している人にとって無駄にはならないだろう。それに、使っているうちにボキャブラリーが増えるという効果も強調しておきたい。表現力が豊かになり、文章の深みも出るだろう。

調べるというはっきりした目的のある行いだけではなく、ただ読み流していくという行いにもしっかり対応する。実は、この辞典の本領はこちらにあるのかもしれない。言葉に関する発想力を刺激する、と言えばいいだろうか。深層心理とまでは言わないが、無意識と呼ばれるものの力が司る領域の中で機能しているものの回転数、あるいは周波数が上がると言えばいいだろうか。

小中高生、大学生、そしてもちろん社会人も、毎日眺めても飽きない内容だと思う。

どうでもいいかもしれないけど、冒頭のくだりの結果も記しておく。
家に帰ってきて、買ったライトを取り付けている時、二人で同時に思い出してコンビ名をハモった。「クール、クール、クールポコ!!」

(文:宇佐和通)

ことば選び実用辞典

著者:学研辞典編集部・編
出版社:学研プラス
「アレだよ,アレ! いや微妙に違うあのことば! 」
しっくりくる表現が出てこないときに,開けば解決する辞典。薄い,軽い,小さいの三拍子でいつでもどこでも使えます。
お手頃な価格とサイズでも,約10,000語を収録している充実した辞典。文章を書く人すべてが持っておきたい一冊です。

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