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社会が高速化すると、童話も高速化する

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先日、80年代に流行したトレンディドラマを見直してみた。

20年以上も昔の連ドラは、バブル真っ只中の街の中で、男女数人が恋愛模様を繰り広げていた。当時はまだ携帯電話がなく、登場人物は相手の部屋に電話をしても、留守番電話がむなしく応答することもある。外出先から公衆電話を探して再度かけても、相手はまだ留守で、どこに行ってるんだとやきもきする。見ていた高校生の娘が「LINEすればすぐなのに!」と口走った。スマホやアプリができたことで、恋愛時間もぐっと短縮した気がする。

恋愛時間の短縮

思えば私たちの学生時代は、電話といえば自宅に1台しかないものだった。
好きな男の人に電話をかけると、まず彼のお母さんが出る。「○○くんいますか」とビクビクしながら聞かなくてはならない。それがどれほどの緊張を伴うものなのか、スマホを1人1台持っているような今の時代の子どもたちは、知らない。
ラブレターをポストに投函し、彼に届くまでに2日ほどかかる。返事を待つ間の苦しさやときめきを、オンラインで瞬時にメッセージを送ることができる今の子どもたちは知らない。

思えば昔は待つことの連続だった。
彼からの電話を待って、自宅の黒電話の前で座り込んでいた時、待ち合わせ場所に相手が現れなくても連絡手段もないからただじっと待つ時、必死に空いてる公衆電話を探す時、頭の中は大好きな彼のことでいっぱいだった気がする。そして彼は今どうしているのか色々なシミュレーションを頭の中で考えていた。今の子どもたちにはこの空想の時間がない。彼とやりとりしたいと思ったら、夜中でもどこにいてもLINEを送ることができてしまう。

仕事時間の短縮

短縮されたのは恋愛だけではない。

仕事のやりとりも短縮された。私が若い頃は、ワープロに打ち込んだ原稿をフロッピーに入れて郵送していたが、今ではメールで送れるので瞬時である。打ち合わせもメールやスカイプで行うので、担当編集者の顔を知らないまま原稿を書くことも増えた。書類の移動や人とのやりとりが遠くにいても可能になったので、海外や地方で仕事をする人も増えている気がする。原稿の移動時間の短縮については、本当にありがたいと感じている。

事務的な用事の時間が短縮されると、その分、自分の本業にしっかりと向き合えるようになる。もしくは残業なども少なくなる。最近、あちこちで残業時間の縮小や、早い時間の帰宅が奨励されるようになっている。政府は月末の金曜日には午後3時で退社し、買い物をしたり家族と過ごすようにと「プレミアムフライデー」なるものまで実施しようとしている。これについてはいろいろな事情があるだろうけれど、仕事時間が短縮され早く退社することが可能になったからこそ企画できることではないだろうか。

物語の高速化

そして、社会が高速化されると、なじみの物語も高速化するのかもしれない。『忙しい現代人のための 2秒で読める 世界クイック名作集』(マキゾウ・オモコロ編集部・著/イースト・プレス刊)は、名作童話を2秒で理解できるよう1コマ漫画などで表現していてとても興味深い。最先端技術や文明の利器があれば、童話に劇的な変化が訪れてしまうのだ。

例えば『みにくいアヒルの子』ではみにくいアヒルの子にDNA鑑定を受けさせている。確かに鑑定してしまえば白鳥の子だと瞬時に分かるので話はそれで完結する。『ヘンゼルとグレーテル』では、森から帰るときに子どもたちがあらかじめまいていたパンくずを辿ろうとするが、鳥などに食べられて道がわからなくなってしまう。しかしこれもGPSを使わせたら、迷うことなく帰宅できてしまった。

この本にはこのような短縮された物語が何十も収録されていて、どれも斬新な展開で童話をあっという間に終了させている。そしてこのテンポが不思議と心地いい。高速化した社会には、それに合ったハイスピードな童話が必要で、まずは結論ありきなのかもしれない。「3センチしかない一寸法師が鬼を退治しました。」それだけ聞いたら子どもは「えっ、どうやって?」と反応するはずだ。社会の流れに合った新しい伝承法が、今、求められているのかもしれない。

(文・内藤みか)

忙しい現代人のための 2秒で読める 世界クイック名作集

著者:マキゾウ・オモコロ編集部
出版社:イースト・プレス
地獄のミサワも読むなり絶叫したという伝説のWEBコミックが待望の書籍化! 人気WEBマガジン「オモコロ」に掲載されるや、一夜にして数百ものリツイートや「いいね!」を集めまくった、伝説の出オチ系シュールマンガ『忙しいママのためのクイック童話集』が、2年の月日を経てついに書籍化! WEB版で掲載された「桃太郎」「北風と太陽」「鶴の恩返し」などはすべてリニューアル!全50話、完全描き下ろしバージョンでお届けします!

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