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愛は食卓で試されるのか?

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仲のいい女友達が言った。
「私さぁ、最近、外食できなくなちゃってさ。かといって、作るのも面倒くさいから、ここ3日間、ろくなもん食べてないのよ」
「なんで?」と、私は絶句した。
彼女は東京のど真ん中にある高級マンションに住んでいる。
収入だって、私とは桁違い。
仕事も順調だと聞いている。
素敵なレストランがこれほど似合う女性はいない。
それなのに、なぜ?

お一人さまですか?

よくよく聞いてみると、レストランに入ると「お一人様ですか?」と聞かれるのが嫌だというのだ。
ああ、確かに・・。
私もたまに一人で外食するが、テーブルにつく前に必ず聞かれる。
「お一人様ですか?おたばこをお吸いですか?」、と。
見れば一人だってわかるでしょ?と、言いたい気持をこらえて、
「はい、一人です。いいえ、吸いません」と、答える。
案内する方だって、仕事だ。マニュアル通りに、質問しないと、給料がもらえないだろうし、人数によって、誘導する席も違ってくる。
「仕方がないじゃない、そういうことになってるんだから」
私が答えると、彼女はげっそりした顔で、「でもさあ、いやなもんだよ。おまえは一緒にご飯食べる男もいないのか?って言われてるような気がしてさ。それに一人でご飯食べるって、悲しくない?黙って食べて、黙って飲んで、黙ってお金払って。こんなことなら、しょうもない男だったけど、別れなきゃよかったって思うんだよね」
彼女はパートナーと別れたばかりなのである。
そして、心底うらやましそうに私を見る。

カップルなら問題ないのか?

うらやましがられるような立場にないが、確かに、私は結婚して、35年になる。
レストランにいくときは、たいてい夫と行く。
夫はせっかちだから、「お一人様ですか云々・・」と、質問している女の子をなぎ倒す勢いで、「二人、吸わない。混んでるなら吸う」と、わけのわからぬ返事をして、突進し、勝手に好きな席を選ぼうとする。
これがうらやましがられるようなことかどうかはわからないけれど、とりあえず、一人で黙々と食事する状態からは逃れられる。
しかし、これですべては解決というわけにはいかないらしい。

診療内科医の姫野友美先生によれば、

”食卓で黙り込む夫婦は長生きできない”
”二人で健康に楽しく生きられるのか。それを考えていかないと、せっかく充
実して生きてきた時間を、残り20年間で台無しにしてしまうような気がする”

というのだから。

私にも心当たりが・・・

ギクっとする言葉である。
実は、最近、夫と外食に行っても、なんだか会話がはずまない。
話していないことはないのだけれど、彼が言うことにあまり興味がもてず、適当にながしている。早く自分の話がしたくて仕方がないのだ。
やっと自分の順番が来て、話を始めると、今度は明らかに夫が退屈しているのがわかる。
そんなに私の話はつまらないのか!
あなたの話だって我慢して聞いていたのにさ!!
心の中でそう思いながらも、ま、仕方がないか、とも思う。
私の夫は、自分の話をするのは好きでも、人の話を聞くのはあまり好きではないからだ。世の男性には、新聞で顔を覆いながら食事をする人もいるというから、それに比べればまだましか~~と、自分を慰めるしかない。
これは中年の夫婦だけに言えることではない。
観察すると、若いカップルだって、しょっちゅう言い合いしてるじゃないか。
「ねぇ、ちょっと。私の話、聞いてるの?さっきからフンフン言うだけじゃないのさ」と。
答えを言いましょう。
多分、聞いてないのだ。
早く話が終わって、自分の番がくるのを待っているのだ。
そして、やがて、自分の番は来ないことを知り、すれ違いにつぐすれ違いが起きてしまうというわけだ。

そんなの嫌だ

そんな人生は寂しい。
そんな人生は悲しい。
せっかく好きになり、カップルになったのなら、できることなら精一杯仲良くして、気持のいいことをたくさんしたい。
それが多くの人の本音だろう。
だったら、一緒に食べて、一緒にお酒を飲んで、一緒に寝よう。
それが人間の幸せってものではなかろうか。
もしあなたがパートナーとの間に、なんとなくすれ違いを感じているなら、とりあえず、一緒に食事をしよう。
お一人様ではなく、二人で食べよう。
そして、自分の話ではなく、愚痴を聞いてもらうのではなく、とりあえず、目の前にある料理の話をしよう。どんなにすれ違っていても、とりあえず、湯気のたった食事を口に運べば、二人は小さな運命を共にすることができるからだ。
メシを食わなきゃ始まらない。
それが太古の昔から人類を支えてきたものに他ならないからだ。

(文:三浦暁子)

食卓で黙り込む夫婦は長生きできない

著者:姫野友美
出版社:学研パブリッシング
男は定年、女性は更年期。環境と身体の変化にともなって、夫婦の間に訪れる愛情崩壊の危機。中には熟年離婚などの悲劇を招くケースもある。心療内科医として、長年男と女の心をみつめてきた名医が、人生の後半戦を幸せに生きる方法をレクチャーする。

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