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リンゴは、惚れ薬として使われていた。

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20代の頃、フェロモン香水というものを買ったことがある。

それは確か、ブタの睾丸から取ったエキスが入ったもので、どことなく生臭かった。それをつけて歩いてみたら、どこからともなくリードに繋がれていない犬が現れ、2、3匹も私についてきた。怖かった。犬は反応することがわかったけれど、ヒトの男は1人もついてこなかった。

なので、二度とつけなかった。

スミレは惚れ薬?

30代になり、離婚して独り身になった後は、スミレの香水を試したこともある。
スミレはシェイクスピアの『真夏の夜の夢』でも、惚れ薬として使われている。寝ている人のまぶたにひとしずく垂らしておくと、その人が目覚めて最初に見た人に恋をしてしまうのだとか。
ほんわかしていい香りだったけれど、私には効果がなかった。いや、効果はあったのかもしれない。見る人がみんな素敵な男性に思えてたくさんの人を好きになってしまったのだ。

ここまで書いて気がついたけれど、好きになってもらいたい相手にスミレの匂いをかけるべきだったのに、私は自分に振りかけていたのだから全く意味がない。自分にかけてどうするのだ、と当時の自分に突っ込みたい気持ちでいっぱいである。でも、確実に毎日は楽しくなった。だって香水をつけるたびに誰かにときめいていた気がするから(あくまで個人の感想です)。

媚薬を求める心理

人はなぜ、媚薬や惚れ薬を求めてしまうのだろう。

媚薬の博物誌』(立木鷹志・著/青弓社・刊)には、古今東西、人々が過去に用いてきた媚薬や惚れ薬について記されている。サフランやトウガラシなどのおなじみのスパイスから、トリカブト、ヘビ、イモリなど恐ろしげなものまである。本を読むとそうした薬の作用により「普段よりも興奮する」状態に陥ることを求めていたのだろう。そして興奮すれば、恋に落ちやすくなるだろうと期待してもいたのだろう。

私の場合は、恋人がいなかったから、ただ単に恋人が欲しかっただけだ。そして、手っ取り早く恋を叶えるために、秘策として惚れ薬を用いようとした。なぜなら、自分の素の魅力だけでは男性を引き寄せる自信がなかったからだ。今思うと、ずいぶん姑息な手を使ったものだ。媚薬に頼ってしまったら、薬が切れた時には相手の恋心が冷めてしまうかもしれないのに。

赤い果実と女神

本の中で、古代の人々はリンゴを惚れ薬だと考えていたと書かれてあった。リンゴは赤い。赤はパワーがある色だと言われている。赤い服を着ている時は気分が高揚する気がするし、実際、赤い下着を身につければパワーが出るというジンクスもあるらしい。サンゴを身につけると女性らしさが育まれるという説もある。それから恋愛感情を象徴するハートも赤色だ。

そういえば、白雪姫を陥れようとする魔女が与えたものも赤い毒リンゴだし、アダムとイブが楽園で、もいで食べたのも赤いリンゴだ。そして彼らはリンゴを食べた途端「恥じらい」を知ったのではなかったか。

リンゴのポリフェノール

古代ギリシャより、リンゴは愛の女神アフロディーテに捧げられた果実だった。だからなのか、催淫作用があるとも考えられていた。北欧の神話にはリンゴを食べれば若返り、年を取らないとも出てくるという。

科学が発達した現代では、リンゴには抗酸化力があるポリフェノールがブドウや緑茶よりも含まれていることがわかっている。ポリフェノールには強壮効果や抗酸化作用があるのだから、古代の人々が惚れ薬や若返りの果実と考えたのも、1日1個食べれば医者いらずという言葉も、大げさではなかったのかもしれない。実際、1日のリンゴポリフェノールの量は1個分が適切だと言われているのだ。

恋愛に効果があるかどうかは具体的にはわからないけれど、どうやら体には良いことづくめのようなので、この冬はリンゴを箱買いしてみようかと考えている。

(文・内藤みか)

媚薬の博物誌

著者:立木鷹志
出版社:青弓社
古今東西、人々を魅惑し、欲望の臨界点に同居しつづける「愛の薬」ー。アダムとイブの世界から魔女の塗膏、宮廷の霊薬、仙人の秘薬、ドラッグまで、有史以来のさまざまな媚薬の効能とその悲喜劇をつづる、博覧強記の百科全書。

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