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こぼれるお菓子「ルマンド」→茶席で出されたら、どうする?

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まだある。 今でも買える“懐かしの昭和”カタログ ~おやつ編~』(初見健一・著/大空出版・刊)によれば、ブルボン社のお菓子「ルマンド」は1974年に発売されたそうです。

商品パッケージには「エクセレントクレープ」と銘打たれていますが、ルマンドは優雅に食べることが難しいお菓子です。

なぜなら、ルマンドはこぼれやすいからです。

ルマンドがこぼれやすいのはなぜか?

こぼれやすい原因は、ルマンドの製法にあります。

ルマンドとは、小麦粉でつくったクレープ生地(薄皮)を重ねて焼いたあとにココアクリームをコーティングしたお菓子です。

クレープ生地のサクサクした食感はまさに「エクセレント」ですが、砕けやすく、食べているときに必ず破片がこぼれ落ちます。ルマンドを食べているところを、あまり他人には見られたくありません。

ルマンドには「おもてなし」オーラがある

困ったことに、ルマンドはお茶請けに用意されていることが多いです。考えられる理由としては、パッケージデザインが挙げられます。

ルマンドの個包装セロファンのデザインを見ると、紫色の背景に金文字で「ルマンド」と印刷されています。お坊さんの袈裟や仏壇の色と調和するため、通夜や葬式における控室に置くにはもってこいです。

さらに言えば、個包装セロファンの透明部分には、ブドウの蔦(つた)を思わせるようなアールヌーボー風のデザインがほどこされています。華やかなシチュエーションでも使えます。

打ってよし守ってよしの万能選手「ルマンド」は、格調高いパッケージデザインや、フランスの「ブルボン王朝」を連想させる社名など、さまざまな要因によって「箔がついている」ため、お客のほうも受け入れやすいのかもしれません。

ルマンドはリーズナブルお菓子でありながら、尋常ではない「おもてなし」オーラを帯びているのです。

もしもルマンドを茶席で勧められてしまったら?

「おもてなし」といえば、茶道です。冠婚葬祭に耐えうるのですから、本格的な茶席にルマンドが出てきても不思議ではありません。

ただし、何度も申し上げているとおり、ルマンドは「こぼれやすいお菓子」です。正しい作法を知らなければ、茶席の亭主や他の客人たちの前で恥をかくことになります。

もしもルマンドが茶席に出てくるとすれば、個包装セロファンをはずしたものが出てくると思います。

つまり「1本まるごと」です。ルマンドは「こわれやすい」ため、断面を崩さずに、あらかじめ切り分けるのが難しいからです。

ルマンドのお作法

茶道では、出されたお菓子を一口で食べません。なるべく数回に分けたほうが望ましいとされています。手づかみも避けたほうがいいです。ルマンドの場合、ココアクリームによって指がべとつきます。

茶席でルマンドを食べるときには、黒文字(菓子切り ※冒頭写真参照)と呼ばれる茶道具を使うしかありません。ナイフとフォークを兼ねたものです。

ルマンドを一口サイズに切り分けるため、男性なら二等分、女性ならば三等分してください。このとき、黒文字に力を込めすぎないように気を付けましょう。焼きクレープ生地の破片が周囲に飛び散るからです。

切り分けたルマンドに黒文字を突き刺します。力を込めすぎるとルマンドが崩壊します。黒文字を5ミリくらいの深さでルマンドに押し込めば持ち上げることができます。

ルマンドを口に運ぶときにも気を抜かないでください。このとき、内心の緊張と焦りを表情にあらわさないよう気をつけたほうが良いでしょう。

皿上には崩れた「ルマンドの破片」が残りますが、一期一会を旨とする茶席において、それは「食べカス」ではありません。

この世の「真理」です。

すなわち、形あるものはやがて壊れる。壊れてしまうからこそ、はかなくて美しいのです。

ルマンドは人生にとって大切なことを教えてくれます。

(文:忌川タツヤ)

まだある。 今でも買える“懐かしの昭和”カタログ ~おやつ編~

著者:初見健一
出版社:大空出版
学校から帰ると、待っているのは「三時のおやつ」。甘食、シベリア、マドレーヌ、チョココロネ…そんな「昭和のおやつ・お茶菓子」を中心に、思わず「え?これ、“まだある”の?」と叫んでしまうモノを一〇〇点セレクト。菓子パン・洋菓子から、ディープな「おばあちゃん専用お菓子」まで、あのころの「おやつ」をオールカラーで一挙紹介。「もう一度食べてみたい!」が満載です。

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