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東京五輪に向けて声を大にして言いたい。「パラリンピックがもっと見たい!」

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今年の夏は熱かった。リオ五輪に日本中が大興奮した。先日銀座で行われた選手団の凱旋パレードに、なんと80万もの人が詰めかけたのは記憶に新しい。選手たちを直接祝福できるこの凱旋パレード、4年前のロンドン五輪のときと今回とで、変わった点がある。
実は、ロンドン五輪ではパラリンピックの選手は凱旋パレードに参加していなかった。しかし今回は、リオ五輪・パラリンピックの合同で行われたのだ。

パラリンピックの選手が五輪選手の記録を超えた!?

今回のリオパラリンピックで、とても興味深い結果が出たのをご存じだろうか?
それは、陸上男子1500メートルT13という視覚障害クラスで起こった。なんと、上位4名のタイムが、リオ五輪の男子1500メートルで金メダルをとった選手のタイムを上回ったというのだ。またパワーリフティングでも、107kg超級に出場したイランの選手が、ほぼ同じルールで競う健常者の記録を35kgも上回る結果を叩きだしたのだそう。

もちろん、レース環境など様々な要因が考えられるが、それでも、単純にこれらの結果を見ると、パラリンピックの選手たちのレベルが五輪選手にほぼ並んだといえるのではないだろうか。ちなみに、リオパラリンピックでの日本の獲得メダル数は、金メダルこそなかったものの、銀メダル10個、銅メダル14個という、大健闘の結果を残している。

パラリンピックはもっと注目されるべきである

こんなにもレベルが高く、素晴らしい結果を出しているパラリンピック。各メディアも以前よりは取り上げているようだが、それでもその数は少ない。何より、競技の様子を放送しているのが、NHKとBSのみ。その大きな理由のひとつには、スポンサーの問題という大人の事情があると推測される。

しかし、目にできる機会が少なければ、自ずと世間の関心度も上がらない。先に述べた凱旋パレードに五輪&パラリンピック選手が合同で参加した件は、2020年に迫った東京オリンピックに向けて、五輪とパラリンピックをより一体化させていくためにとても良い変化だと思う。だが、肝心の競技内容や結果、選手たちをもっともっとクローズアップして、メディアが積極的に取り上げ、盛り上げていくことが先決ではないだろうか。

パラスイマー・一ノ瀬メイ選手から学ぶこと

ここに一冊の本がある。19歳のパラスイマー・一ノ瀬メイさんの半生を描いた『私が今日も、泳ぐ理由』(金治直美・著/学研プラス・刊)である。「イチローが嫌いだ。」というTOYOTAのCMに出ていることでも話題の彼女は、生まれつき右ひじから先がない「先天性の右前腕欠損症」という状態で生まれてきた。そんなメイさんを、ご両親は「障害を隠さない」方針で育てることに決めた。
保育園の頃から、身の回りのことは何でも自分でする。着替え、食事、トイレは当たり前、なわとびだって鉄棒だってお手の物。自転車にも、繰り返し繰り返し練習して補助輪なしで乗れるようになった。そして、大好きな水泳に出会い、パラリンピック選手になるまでの、それこそ血の滲むような努力と練習の日々が、子どもでも読めるようにふりがな付きでわかりやすく書かれている。

何より、この本でメイ選手が強くメッセージしているのが、メイさんの言葉をそのまま借りると、"何かと「障害者扱いしたがる」日本の社会"について。
初めて訪れたスイミングセンターで、競泳コースを希望したのにもかかわらず、有無をいわさず「障害者クラス」にしか入会できないと冷たくあしらわれたこと。世間からの好奇の目。一方、メイさんの父親の故郷であるイギリスでは、腕をじろじろ見られたり、「どうしてその腕に?」と聞く人はいなかったこと。障害を持っているからといってひどい対応を受けることはなかったこと。時には右腕のことをからかう子どももいたけれど、その子に対して学校側は厳しく指導したこと。

日本の社会が「障害者」を作り出し、「健常者」との垣根を設けたがっているのでは?とメイさんは述べる。腕が短いから障害者、だから何もできないだろう、というイメージを覆したい。そして、彼女が望むのは、「障害のあるなしに関わらず、女性も男性も高齢者も若者も、すべての人が自分の能力を発揮でき、活き活きとくらせる社会」(本書より)なのだ。

2020年東京五輪に向けて思うこと

リオ五輪が終わり、テレビをつければ、毎日必ず耳にする東京五輪関連のニュース。計画当初よりも膨らみ続けている予算、会場の再検討、整備計画の見直し。正直、私はちょっとうんざりしている。これがあと4年も続くの?と思うと、なんだかゾッとする。

もちろん、会場の話も予算の話も大切だ。でも。素人に何がわかる!と思われるかもしれないけれど、もっと大切なことってあるんじゃないかなぁ。ボランティアを募集しようとしているけど、本当にボランティアで行う範疇の話なのか。オリンピック選手、特にパラリンピックのメダリストへの報酬額はもっと上げられないのか。パラリンピックにもっとスポンサーがつくような策はないのか。メイさんが発してくれたメッセージを真摯に受け止め、現実にしていくためには、どうしたらいいのか。
2020年の東京大会では、パラリンピックの選手たちが活躍する姿を、テレビでも見られることを強く望む。

 

※『私が今日も、泳ぐ理由』では、「障がい者」とひらがな使用した表記でも解決されない問題があること、障害者にとっては「まわりの環境、社会が障害」となるという考え方から、一ノ瀬メイさん、出版元の編集部の意図により、「障害者」と漢字表記をしています。本コラムもその意図に賛同し、漢字表記にいたしました。

(文・水谷 花楓)

私が今日も、泳ぐ理由

著者:金治直美
出版社:学研プラス
「障害は個性」、「障害は社会が作るもの」。リオパラリンピック、さらに2020年東京へと、とびきり前向きに成長し続ける、パラ水泳・一ノ瀬メイ選手の、半生と努力、そして何より伝えたい「障害と社会の関係性」についてのメッセージをつめた1冊。

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