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ラーメン映画とラーメン漫画

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日本映画オールタイムベスト100を選ぶとすれば『タンポポ』をはずせない。1985年公開。伊丹十三監督作品である。

主演は、宮本信子と山崎努。ほかにも津川雅彦や大滝秀治など、おなじみ伊丹組の面々に加えて、デビューしてまもない頃の渡辺謙も出演している。

映画『タンポポ』は、伊丹監督によって「ラーメン・ウエスタン」と銘打たれている。宮本信子の役どころは、小学生の子どもを育てながらひとりでラーメン屋を切り盛りしている女店主だ。名前を「たんぽぽ」という。

日本映画史に燦然とかがやくグルメ映画

女店主「たんぽぽ」は、亡き夫の見よう見まねで厨房に立ってラーメン屋を続けていたが、店には閑古鳥が鳴いていた。

そこへラーメンを食べにやってきたのが、山崎努演じる通りすがりのタンクローリー運転手だ。けなげな未亡人の女店主にほだされた山崎努は、ラーメン屋の再建に一役買うことになる。

映画では、ラーメンの食作法にはじまり、注文の受けかた、調理時間の短縮トレーニング、繁盛店に忍び込んでうまいスープの秘密を探ったりするなど、たんぽぽの店を「町いちばんの行列のできるラーメン店」にするための過程が描かれる。観終わったあとには無性にラーメンが食べたくなる映画だ。

ラーメン戦争

国民的グルメマンガ『美味しんぼ』にも、ラーメンを語り尽くしたエピソードがある。第38巻『ラーメン戦争』だ。1冊まるごとラーメン尽くしの内容である。

繁盛店のラーメンを食べに来ていた山岡士郎は、店先でトラブルを起こしていた少年に出会う。事情を聞くと、母のために「スープを持ち帰ろう」としたという。

少年の母は、女手ひとつでラーメン屋を切り盛りしていた。亡き夫が残してくれた店を受け継いで母子ふたりで暮らしていたが、近所に人気ラーメン店「流星組」がやってきたせいで苦境に立たされていた。

「流星組」のラーメンは、食通の山岡士郎も認める味だった。しかし、経営手法はえげつない。狙いを定めた「好立地にあるラーメン屋」の近くに屋台を出店して、客を奪って、最終的には店ごと乗っ取ってしまうのだ。

母子に同情した山岡士郎は、強引な手法によって全国制覇を目指す「流星組」に宣戦布告する。亡き夫の形見であるラーメン店の「のれん」を賭けてラーメン対決をおこなうことになる。生き残りをかけた「ラーメン戦争」が勃発するというわけだ。

最高のラーメンとは何か

『美味しんぼ』原作者である雁屋哲のラーメン好きは相当なものだ。雁屋哲は、自腹で何十万も費やして「究極のラーメン」を作ってみせたこともある。グルメコラム集『美味しんぼ塾』に詳しい。

国民食と言われようになったラーメンには、大のオトナに全身全霊や情熱を傾けさせる「何か」があるようだ。

漫画『ラーメン狩り』(鬼窪浩久・著/実業之日本社・刊)にも、理想のラーメン作りに取り憑かれた男たちが登場する。まずいラーメンを食べると「左目から涙を流す」という男性主人公のキャラクター設定には驚いた。

『ラーメン狩り』のメインテーマは、ラーメン職人による自問自答だ。最高のラーメンとは何か。最大公約数のお客が支持するものがそうなのか。それとも、作り手である自分自身が最高であると思うものがそうなのか。

先に紹介した「まずいラーメンを食べると左目から涙を流す男」もラーメン職人であり、最終話ではついに真理に至る。グルメ漫画とは思えないシリアスなラストエピソードが印象に残った。

(文:忌川タツヤ)

ラーメン狩り

著者:鬼窪浩久
出版社:実業之日本社
ラーメンに魅了された雑誌の編集者、佐倉美奈子が出会ったのは、理想のラーメンを求める黒沼凌(クロヌマリョウ)と凌と志を共にする面々だった!! 許せない店も客もいらないッ!! 凌たちの闘いに美奈子も協力し……!?

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