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X/108:お金に関する煩悩はいくつある?

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この種の事件、発生のサイクルみたいなものがあるとしか思えない。10月12日、外貨取引のオンラインシステムを不正に操作して、三井住友銀行から約1億9000万円を詐取したとして、元副支店長が逮捕された。ちなみにこの金額、総額ではない。犯人の男性は、2007年頃から同じ手口を繰り返し、合計11億円あまりを着服していたという。

チリで最も大きな成功を手にしたプリティ―ウーマン

発生のサイクルという言葉を出した理由は、2001年に発覚した青森県住宅供給公社横領事件巨額着服事件を思い出したからだ。こちらの事件も、被害金額は約11億円。犯人の公社元経理担当主幹は、当時青森市内のパブで働いていたチリ人女性に詐取した公金を貢いでいた。

今では知らない人のほうが多いだろうが、彼女こそ「あの人は今」的番組にときどき顔を出すアニータ・アルバラードさんだ。母国チリでは、〝最も成功したプリティーウーマン〟というニックネームをいまだにほしいままにしているらしい。

富山市議会ドミノ辞職

さて、三井住友銀行巨額詐欺事件が発覚する1ヵ月ほど前、富山市議会議員が相次いで辞表を提出するという出来事があった。10月3日時点で、辞職した議員の総数は12人。定数40人のうち12人が辞表を提出するという異常事態の原因は、政務活動費の不正取得が明るみに出てしまったからだ。

手口は、白紙領収書による架空請求や領収書の偽造、受領済の領収書の支払い額の改ざんによる水増し請求という単純なもの。3を8に書き変えたり、¥マークと先頭の数字の間にできた隙間に1を書き入れたりと、トホホな手口でお小遣い稼ぎをしていたわけだ。

こうして詐取した最高金額は個人で694万円、会派で1943万円だった。たかが、と言ってはなんだが、20万円程度の金額で議員バッジを外すことになった人もいた。

富山市議会の公式ウェブサイトで開示されている資料によれば、月給は議長で71万5000円、副議長で64万5000円、議員で60万円となっている。選挙民から信頼されて市議会議員という公職に就いた人たちが領収書の改ざんや白紙領収書なんていう手口で私腹を肥やすとは。金額についても、先に紹介した11億円という金額と比較すると、いやが上にも小物感が強調されてしまう。

で、どう使ったの?

ちなみに、元副支店長は、着服した金を子供の教育費や愛人のマンション購入に使った。現金のまま自宅に隠し持っていた3億円は「将来のために備えておく」お金だった。

愛人にぽーんと1億のマンションを買い与えておきながら、子どもの教育費の手当ても怠らず、さらに3億は老後の生活を考えて現金でキープ。2億円が入った銀行口座もあったという。この人、お金に対する感覚の振れ幅が大きくて、ワイルドなのか堅実なのかわからない。

日本人の平均貯蓄額は1209万円

青森県住宅供給公社の元経理担当主幹は、貢いで気に入ってもらおうという単純で明確な動機に衝き動かされていたはずだ。でも、元副支店長と元富山市議会議員のみなさんには、別の種類の共通する動機が見え隠れしている気がする。

公金であれ、預金者のお金であれ、それを横領することはもちろん許されないが、ぶっちゃけて言えばお金はいくらあっても邪魔にならない。手持ちのお金が少なくなってくれば、いくばくかの不安も生まれるだろう。誰しも感じるお金に関する不安が何らかのきっかけで大きくなり、人のお金に手をつけるという極端な行為に走ってしまう。そういうメンタリティを持つ人が絶対にいないとは言い切れない。

それなら、具体的にいくらあれば不安を感じないでいられるのか。ここにひとつの指標を挙げておく。

金融広報中央委員会という組織が2015年11月に発表した『家計の金融行動に関する世論調査』によれば、日本の二人以上世帯の平均貯蓄額は1209万円だという。もちろん、この金額に関しては実感が伴う人も伴わない人もいるだろう。

お金と煩悩はコインの裏表

筆者も含め、1209万円という金額を見て焦りを感じた人にお勧めしたいのが、『お金の不安がゼロになる50の悟り』(文丘雄清・著/かんき出版・刊)という本だ。帯に「貯金100万円以下でも大丈夫」という心強い文字が躍る。

著者の文丘雄清さんは、ファイナンシャル・プランナーで僧侶、さらに工学博士という多才な人物。そんなお金の知識も悟りも極めた著者が語りかける哲学は一読に値する。立脚点を確認しておこう。

本書を手にとっていただいた人は、きっとお金に対する「漠然とした不安」を抱えていることでしょう。本書はそのような「なんだかわからないけれど、将来お金が足りなくなりそうでなんとなく不安」という気持ちを解消するために、煩悩に振り回されることなく、お金と賢くつき合う方法をご紹介する本です。

『お金の不安がゼロになる50の悟り』より引用

お金の不安をなくすための方法は各論があるのだが、目次を見ていくだけでも、自覚すべきあるいは考え方を変えるべきことがいかにたくさんあるかを自覚せざるを得ない。

・お金は追いかけるほど逃げていく
・「嫉妬」はお金とのご縁を断つ恐ろしい感情だと心得る
・「見栄」は不幸の種。他人と比べるのをやめる
・小さな出費を侮ると、大きな後悔をすることになる
・好きなことを仕事にするとお金が入ってくるのは真実

自覚すべきことと考え方を変えるべきこと、それに加えて思い出すべきこともあるようだ。お金に関する不安がまったくないという人はいないはず。大小に関わらず、少しでも感じた時に手に取りたい。じっくり読むためにも、対症療法を目的にしても有益な一冊。

(文:宇佐和通)

お金の不安がゼロになる50の悟り

著者:文丘雄清
出版社:かんき出版
ファイナンシャルプランナー、僧侶、工学博士という3つの顔を持つ著者が語る、お金に愛される方法。僧侶という立場から、「人と比べてしまう」「つい見栄を張ってしまう」というようなお金に関する「煩悩」を解消する方法を、親鸞などの高僧の言葉や原始仏典の教えなどを紹介しながら解説。ファイナンシャルプランナーという立場からは、お金の役割、節約の方法、貯めたお金をどう使うか、投資によって資産を殖やすことに対する考え方や方法など、実用的なノウハウを解説。工学博士の立場からは、お寺を飛び出し、好きな研究の道に進んだ経験から、好きなことをしながらお金を稼ぐ、自分のやりたいことを追求することの大切さを語ります。

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