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この秋、改めて『華麗なるギャツビー』にしびれています

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理由はわからないのだけれど、時々、『華麗なるギャツビー』(F・スコット・フィッツジェラルド・著、橋本福夫・訳/早川書房・刊)を読みたくてたまらなくなる。
普段は、日本の小説で十分に満足していて、海外の物語はどちらといえば敬遠している。
それなのに、突如、わきあがるギャツビーへの欲求。読みたくて欲しくて、もうどうかなりそう!!と、なる。
なぜ、そうなるのか?
自分でも不思議だ。

衣替えの代わりにしたことは

今日も「ギャツビー病」が再燃した。
10月も中旬だというのに、暑いのだか寒いのだかわからない日が続いているからかもしれない。
そろそろ衣替えをと思いつつ、まだ早いかな、今日も暑いしな~~と、迷っていたとき、ふと「そうだ、こんな日はギャツビーを読もう」と、なった。
ダウンロードして、読み始めるや、止まらなくなった。1度読み終えたのに、好きなシーンを再読したりしているうち、気づいたら夕方になっていた。
当然、衣替えは手つかずで、クローゼットの中は夏物がぶらさがったまま。

レオナルド・ディカプリオ演じるギャツビーは本当に素敵

本を読んだ後、DVDも観てしまった。
『華麗なるギャツビー』は、1974年にロバート・レッドフォードが主演している。素敵な映画で何度か観たが、今回は、2013年のレオナルド・ディカプリオ主演版を観た。
レッドフォードのギャツビーもいいが、ディカプリオのギャツビーは、生々しく、寂しく、悲しく、そして本当に美しい。
原作は1925年に出版された作品だというのに、その輝きを失うことはないのだから、おそろしくなる。

西たまご村に住むギャツビー

主人公のニック・キャラウエィは証券会社に勤める若者で、ウエスト・エッグ(西たまご)という不思議な名のついた村に住んでいる。そこは豪邸が連なる場所だが、ニックが住む家は小さな家で、豪邸と豪邸の間にすきま家具のようにたたずんでいる。
ニックは暮らし始めてすぐ、隣家の大豪邸に不思議な人物がいるのに気づいた。
豪邸の主はジェイ・ギャツビー。貧しい暮らしから抜け出し、自分で富を勝ち取った男だ。
ギャツビーは毎日、毎日、パーティを開く。
よく知らない人も屋敷に招き入れ、ただただどんちゃん騒ぎを繰り返す。
一体何のために?
それもこれも、実は、彼がひたすらに思い続けるデイジーを惹きつけるために行われるものだ。

東たまご村に住むデイジー

デイジーは大富豪の夫人であり、河をはさんだ向かい側イースト・エッグ(東たまご)村に住んでいる。
ギャツビーは毎日、一人で入り江にたたずみ、デイジーの邸宅を眺める。
再会する日を待ちかねているのだ。
豪勢なパーティは、デイジーに気づいて欲しいから行われるもので、いわば撒き餌だ。
著者であるフィッツジェラルドは、何不自由のない暮らしをしながら幸福ではないデイジーと、謎の富豪ギャツビーの関係を、少しずつ、少しずつ、薄皮をはぐように明らかにしていく。
皮をはぐ役目をになうのがニック・キャラウエィ、その人だ。

ギャツビーの微笑

ニックとギャツビーが最初に出会うシーンは素晴らしい。

彼はあなたの気持ちはよくわかると言わないばかりの微笑を浮かべた――。それは理解等という言葉をはるかに超えた微笑だった。一生のうちに四、五度くらいしかでっくわしそうにない、永遠の保証のようなものをたたえた、まれに見る微笑だった。

(『華麗なるギャツビー』より引用)

映画では、ディカプリオは笑い声をたてるでもなく、しかし、滅多に見ることができない極上の笑顔を浮かべてみせた。
やっぱりいいわ、ディカプリオ!!

華麗なるギャツビーのみじめで華麗な最期

貧しく、恵まれない境遇の青年が、初めて恋した上流階級の娘に恋い焦がれ、なんとかして自分のものにしようと、なりふりかまわぬ生き方をする。でたらめと言えばでたらめな、危険このうえないその行動。
だからこそ、ギャツビーは「華麗なる」という言葉を冠するにふさわしい男となったのだと思う。
しかし、彼のお葬式は寂しいものだった。
さんざん、ただ酒を飲んだパーティの参加者は一人も来ることはなく、愛して愛し抜いたディジーも姿を見せない。
ギャツビーは上流社会へも、愛する人へも、とうとう到達することはできず、絶縁状態であった貧しい父親に見送られ、天国へ旅立った。
しかし、それでも、ギャツビーの極上の笑顔は失われることはないだろう。
どんな裏切りを受けてもなお、ギャツビーはやはりたぐいまれなり男に他ならないからだ。
華麗なるギャツビーは最期まで華麗であり続けたと、私は信じている。

 

(文・三浦暁子)

この秋、改めて『華麗なるギャッツビー』にしびれています

著者:F・スコット・フィッツジェラルド(著) 橋本福夫(訳)
出版社:早川書房
豪華な屋敷に住み、日ごと盛大なパーティーをもよおす謎の男ギャツビー。人妻となってしまったかつての恋人デイジーを取り戻そうとしながら、不慮の死を遂げる一途な男……。1920年代のニューヨークを舞台に、華麗にして悲劇的なギャツビーの生涯を描き、失われた青春の夢を哀愁をこめて謳いあげる名作。レオナルド・ディカプリオ主演映画原作。

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