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年収を30倍にしたビジネスパーソンが語る、本当の「やりがい」とは?

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ミステリィ作家・森博嗣が執筆活動を「ビジネス」だと割り切っているのは有名な話だ。莫大な印税収入を得ることで年収は大学時代の30倍になり、それが10年間も続いたという。

森先生による「仕事」の定義付けは、じつに明快だ。

したいという気持ちはそれほどないけれど、それをしないと困ったことになるからするもの
(『「やりがいのある仕事」という幻想』から引用)

まさに! やりたくないけれど、やらなければ「困ったこと」になる。なにが困るかといえば、仕事をしないとカネがもらえない。身もフタもない言い方をするならば、たいていの人は「カネが目当て」で仕事をしているはずだ。

ちがうとは言わせないよ!

「仕事」は何だって良い

福沢諭吉。ふくざわゆきち!
百万円。ひゃくまんえん!

まさに「声に出して読みたい日本語」だ。すばらしい響きである。なぜなら、カネは「自由」と交換することができるからだ。好きなものを食べる「自由」、行きたいところに行ける「自由」、欲しいものを買える「自由」など。

仕事をしてカネを得れば、人は自由を得ることができる。自由という目的を果たすための「手段」であって、つまるところカネがもらえるのなら「仕事」は何だって良いのだ。

「働く」ことが一番簡単

天才と呼ばれる人たちは「それまでになかった仕事を自分で創造」する。たとえば、スティーブ・ジョブズ(ウォズニアックも!)は、Mac、iPod、iPhoneという素晴らしい道具を世に送り出した。

その一方で、「凡人」はいまある仕事を選ぶことしかできない、と森博嗣は述べている。

森先生ご自身は「凡人」とは言いがたいものの、はじめは国立大学の研究者という仕事(国家公務員)を選んだ。そのあと38歳のときに作家デビューして、『真賀田四季』という字並びを目にするだけで震えがくるほどの魅力的なキャラクターや『S&Mシリーズ』などを創作したことにより、累計1000万部超えのベストセラー作家として「天才」であることを証明した。

たいていの人間は「凡人」なのだから、世の中にある仕事のどれかを選ぶしかない。逆にいえば、平凡な人間であってもいまある仕事のどれかを選ぶだけで、さほど労せずに自由との引換券を手に入れることができる。

自由な時間がほしいのなら「働く」ことが一番の近道なのだ。

本当の「やりがい」とは何か?

森博嗣は「やりがい」という言葉に違和感をおぼえるという。「やりがい」は「手応え」と言い換えることもできる。

 手応えのある仕事というのは、簡単に終わらない、ちょっとした苦労がある仕事のことである。同様に、やりがいのある仕事も、本来の意味は、やはり少々苦労が伴う仕事のことだ。
(『「やりがいのある仕事」という幻想』から引用)

日本人向けにたとえるなら『プロジェクトX』のイメージかもしれない。無謀ともいえることを実現するために、定時を超えて会社に泊まりこんだり、家庭や自分の健康もかえりみず、数々の困難を乗り越えてみせる。

しかし、森先生の「やりがい」は異なる。

 本当に素晴らしい仕事というのは、最初からコンスタントに作業を進め、余裕をもって終わる、そういう「手応えのない」手順で完成されるものである。この方が仕上がりが良い。綺麗な仕事になる。
(『「やりがいのある仕事」という幻想』から引用)

質の高い仕事をするためには、何度も試行錯誤を繰りかえすという地道で泥くさい訓練が必要になる。森先生は「この自己鍛錬にこそ、手応えがあり、やりがいがある」という。まさに、ぐうの音もでないほどの正論だ。

仕事で悩んでいる人へ

森先生の言うとおり、仕事の数だけ「やりがい」がある。

今回紹介した『「やりがいのある仕事」という幻想』(朝日新聞出版)には、やりがい問題の他にも、働くことにまつわる様々な処方箋が収録されている。ほんの一部だが、要約して紹介する。

質問:働いていると好きなことができません
答え:寝る時間を減らせばいい。好きなことなら寝食を忘れられるはず。

質問:仕事にあきている。もっとメリハリがほしい
答え:メリハリは無いほうが良い。ルーチンワークで済ませられる仕事の仕上がりは、均一で質が高いものだ。

質問:ノマドワーカをどう思いますか?
答え:何も思わない。手法にこだわらない「自由さ」が大切であり、こだわるべきは結果(コンテンツ)だ。

身もフタもない答えばかりだが、明快で正しいアドバイスだ。これぞ森博嗣と言わざるをえない。

(文:忌川タツヤ)

「やりがいのある仕事」という幻想

著者:森博嗣(著)
出版社:朝日新聞出版
私たちはいつから、人生の中で仕事ばかりを重要視し、もがき苦しむようになったのか? 本書は、現在1日1時間労働の森博嗣がおくる画期的仕事論。自分の仕事に対して勢いを持てずにいる社会人はもちろん、大学生にもおすすめ。

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