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3.11から4年、「絆」の物語の裏側で起きていること

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間もなく、東日本大震災、そして福島第一原発事故から4年が経過しようとしている。メディアがすっかり福島や仙台を外からの目線で〝消費〟してしまったなかで、当事者たちが、いたずらにお金の問題で断絶されている。

「風化してはならない」は正しいのだけれど

しばらく前に、取材で福島第一原発から25キロほど離れた民家を訪ねたことがある。客間に案内され、お茶を出されるや否や、話題はたちまち補償金の話になった。あそこの家はいくらもらった、親戚の誰それは地区が違うから出る額がこれだけ違う……近隣住民や知人達がそれぞれいくら貰ったのか、やたらと把握している様子だった。

時を同じくして、とある雑誌の編集部で企画について話し込んでいると、とにかく震災関連の記事が売り上げに繋がりにくくなったと頭を抱えていた。3.11が近付くこの時期になるとたちまち繰り返される「風化してはならない」はまったく正しいフレーズなのだが、時折見せる正しさだけでは気付けない齟齬を住民達が背負わされている。

「住んでいた場所に戻りたい」は20%を切る

福島第一原発の周辺4町に住まいを持ち、現在でも避難を余儀なくされている人たちに対して「自分達の居住区に戻りたいか」を問うた復興庁のアンケート。浪江町・双葉町・大熊町・富岡町の4つの町民のうち、「戻りたい」と答えた人はいずれの町も20%を切る結果となった。全国の原発を段階的に再稼動させたい政府は、地域住民の方達のためにも、と前置きして、徐々に避難区域を解除する方針を示してきたが、復興を急がせる政府よりも、住民達が現実的な選択肢を持っていることが分かる。

「道路が出来れば、防災にも役立つでしょ?」

今野晴貴『断絶の都市センダイ ブラック国家・日本の縮図』は、被災地以外から注がれた目線でたちまち整理されていく「理想の復興」が、いかに「現実の復興」とかけ離れているかを明らかにする一冊だ。例えば、震災翌年から問題視されるようになった「復興予算の流用」問題。復興予算の使い道について、被災地外の官庁舎の耐震工事に多額を投入したり、これまた被災地外の道路建設費を計上し、使われるか甚だ怪しい道路を開通させたり、用途を疑問視する声があがった。

2012年度に復興予算として78億円もの道路建設費を充てられた北海道は、通常の道路工事と何ら変わらない工事でその予算を消費した。国交省の担当者は「道路がないところに道路が出来れば、防災にも役立つことでしょう」と回答したという(本書内の引用/福場ひとみ『国家のシロアリ 復興予算流用の真相』より)。その他、環境保護団体「シーシェパード」対策費や自衛隊の輸送機の装備にも復興予算は使われていたという。

賠償金を「収入」でカウント?

被災地で起きた、生活保護における排除も見過ごせないものだった。生活保護は、国が総力をあげて保護費削減を図っており、窓口に相談を持ちかけてきた人に申請をさせずに追い返すという「水際作戦」が問題視されてきた。震災で問題になったのは、震災前から生活保護を受給していた被災者が、義援金の受け取りを理由に生活保護の受け取りを打ち切られるケース。

「震災で亡くなった方の遺族に支給される災害弔慰金」「福島第一原子力発電所で事故を起こした東京電力による仮払い賠償金」「貸付である災害見舞金」などが、該当する住民それぞれに支払われたが、これらを「収入」と認定し、生活保護を打ち切る事例が確認されたという。厚労省は収入に含まないように通達していたが、自治体ごとの判断で、収入と処理してしまったのだ。地域の分断が、ここでも個人を分断していたのである。

急ぎ足の絆の物語だけでなく

復興を知らせる一つの指標になる求人倍率について、建設業の需要拡大によって、震災直後から数値の上では「被災地には仕事が沢山ある」というイメージを植え付けるに十分な数値が出た。しかし、それは実態とはかけ離れていた。「これだけの数値が出ているのに自立できないのは、自立できないほうが悪い」との印象だけを無闇に高めさせた。こういったいくつもの分断は、風化すればするほどますます強まっていく。急ぎ足で流される様々な絆の物語の裏で起きている分断についても、改めて目を向けたい。

(文:武田砂鉄)

断絶の都市センダイ ブラック国家・日本の縮図

著者:今野晴貴(編著)
出版社:朝日新聞出版
この国には善意も、絆も存在しない。復興バブル、支援ビジネス、貧困と孤独。仙台を見れば“断絶された僕ら”が見えた。こんな国に必要な新しい「つながり」とは? 『ブラック企業』で大佛次郎賞受賞の著者、渾身の衝撃ルポ。

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