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渡部篤郎のモノマネはいつになったら更新されるのか?

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渡部篤郎のモノマネといえば、投げやりな態度と眠そうな目つきで、「なめてんの?」「来いよ」と息巻いているものが有名だ。

そのような形態模写から浮かび上がるのは「強がっているけど、じつは繊細で、アンニュイな、チンピラ気質の男」という役柄だ。視聴者は、それが渡部篤郎のモノマネであることに納得してウケる。笑う。

渡部篤郎=アンニュイなチンピラ。つまり、俳優・渡部篤郎に対する世間一般のイメージは『ケイゾク』の真山刑事から更新されていない、と言えるかもしれない。

モノマネ芸は世間のイメージを映し出す

『ケイゾク』以降にも、渡部篤郎は数多くのテレビドラマや映画に出演している。プライベートではRIKACOとの離婚も経験した。

篤郎本人は、俳優として演技の幅を広げることに努めてきたはずだ。演じてきたのはキレた男やチンピラっぽい役柄ばかりではない。それなのに、なぜ世間の認知は『ケイゾク』由来のものに留まっているのか。

モノマネ芸人が披露する「モノマネ」を面白がるのは、モノマネされている有名人に「あまり興味のない人たち」である。まったく知らないか、代表作だけをかろうじて知っている程度だ。当然、最近の活動など知っているはずがない。いつまでたっても、ひとむかし前に話題になっていたときのイメージが更新されない。

けっして画一的な演技者ではないものの、渡部篤郎にとって「アンニュイなチンピラ気質の男」がハマり役なのは衆目の一致するところだ。真山刑事を演じた『ケイゾク』が大ヒットしたせいで、その後の出演作でも『ケイゾク』由来の演技を求められることがあったかもしれない。

『ケイゾク』以前の渡部篤郎

渡部篤郎のキャリアを調べてみると、1995年頃までには、すでに映画業界で頭角をあらわしていたようだ。

ゴールデンタイムのテレビドラマ出演、つまり多くの視聴者の目に触れるきっかけになったのは、1997年放映の『ストーカー 逃げきれぬ愛』におけるストーカー役(レギュラー出演)である。当初から、キレた人物の演技を求められる傾向にあったようだ。

このあと、1999年放映の『ケイゾク』に至るまでのあいだも、渡部篤郎はさまざまなテレビドラマに出演している。この時期の代表作に挙げられるのは、フジテレビ系列の時代劇ドラマ『剣客商売』における秋山大治郎役だ。世間ずれしていない生真面目な青年剣客を演じていた。

ここからは『剣客商売』のうんちくを語りたい。原作小説をもちろんのこと、『剣客商売』(大島やすいち・著 池波正太郎・著/リイド社・刊)という同名の漫画版も人気がある。

特筆すべきは、女剣客・佐々木三冬のことだ。藤田まこと版『剣客商売』で三冬を演じたのは、女優の大路恵美である。その可憐な出で立ちは、時代劇ドラマであるにもかかわらず、世代を問わず多くの視聴者を「萌え」させた。

はじめのころは、所作やセリフまわしにぎこちなさを感じさせたものの、第1シリーズ、第2シリーズと場数を踏んでいくにつれて、大路恵美は佐々木三冬を我がものにしていった。

だが、『剣客商売』第4シリーズで異変が起きた。渡部篤郎と大路恵美の姿が消えたのである。代わりに、わけのわからない俳優ふたりが大治郎と三冬のフリをしていた。視聴者からすれば、まさに青天の霹靂だった。

「寺島しのぶを許容できるのか」問題

『剣客商売』第3シリーズを最後に、渡部篤郎と大路恵美は降板してしまった。主演の藤田まことは続投していたものの、主要キャラ2人が別人になったのだから、すっかり興ざめしたのは言うまでもない。

新・大治郎役の山口馬木也は、細身の渡部篤郎よりも原作に忠実なシルエットの持ち主だったので、彼に対する反発心は少なかった。

納得できなかったのは、新たに三冬を演じることになった寺島しのぶである。どうやっても、寺島しのぶを可憐な女剣士と見なすことができなかった。いや、寺島しのぶに罪はない。大路恵美があまりにも可憐すぎたのである。

見当ちがいの八つ当たりとはいえ、怒りを抑えきれなかった当時のわたしは、『剣客商売』第4シリーズと第5シリーズのリアルタイム視聴をやめた。ボイコットした。両シリーズを観たのは、数年後のテレビ再放送だった。このとき、わたしは寺島しのぶに対する認識を改めることになった。

それは、寺島しのぶでなければ達成できなかった名作エピソードが1話だけ存在するからだ。第5シリーズ第6話の「その日の三冬」である。大路恵美の三冬では、本田博太郎の怪演を受け止めることはできなかったと思う。いまでは『剣客商売』の全シリーズを分け隔てることなく楽しんでいる。

(文:忌川タツヤ)

剣客商売 1

著者:大島やすいち(著) 池波正太郎(著)
出版社:リイド社
孫ほども年齢の離れた情人・おはると共に暮らす「この世の表も裏もわきまえた」洒脱な老剣客・秋山小兵衛――そして、剣客の世界を歩みだしたばかりの実直な息子・大治郎――この父子は女武芸者・佐々木三冬らとの出会いの中で何を思い、何を見出すのか…華やかなりし江戸を舞台に、個性的な面々の活躍を描く傑作時代劇!!

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