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3大「衣服がシミになる麺メニュー」の傾向と対策

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わたしたち日本人は、ことごとく敗北を喫してきた。カレーうどんに。担々麺に。ミートソーススパゲッティに。どれだけ気をつけて食べても、服に汁が飛び、シミがついてしまう。

たまたま立ち寄った店に、使い捨てのナプキン前掛けが用意してあるとは限らない。前掛けをしていてもなぜか汚れることがある。顔面以外のほぼ全身を覆うことができるレインポンチョ(雨合羽)を持参するという方法もあるが、現実的ではない。

衣服を汚したくない。でも食べたい。まるで魔性に憑りつかれたかのように、わたしたちの胃袋は、カレーうどんを、担々麺を、ミートソーススパゲッティを求めてしまうのだ。

カレーうどんの傾向と対策

スープが茶色だ。ターメリック。シミになれば、ちょっとやそっとでは汚れが落ちない。とろみのある液体は冷めにくいため、飛沫(しぶき)が肌にかかると熱い。凶暴な食いものである。

うどんはラーメンに比べると麺が太い。つまり重い。箸から麺がすべり落ちてしまったときの飛沫の量が多い。バシャーン。被害は甚大である。

後悔するのをわかっていながら、カレーうどんを食べたくなる。誰もが「今日こそはきれいに食べてやるぞ」と決意して、カレーうどんを注文する。結局は、服がシミになる。

対策は「麺を1本ずつ食べる」くらいしか思いつかない。スープがたっぷりからんでいる麺を、箸からすべり落とさないためだ。慎重に口まで運ぶ。飛び散りをふせぐため、麺を勢いよくすすらないことも心がけたい。

担々麺の傾向と対策

赤い。辛い。服のシミになりやすい。まさに全身凶器のような麺メニューだ。しかし、おいしいので定期的に食べたくなる。

担々麺の場合、真っ赤なスープに警戒すべきなのはもちろんのこと、ひき肉がくせものである。麺をたぐりよせたとき箸からすべり落ちると、四方八方手裏剣のごとくひき肉が盛大に飛び散ってしまう。そのあと衣服は散弾銃で撃たれたような有様になる。

ラーメンは麺が細いので、うどんのように「1本ずつ食べる」ことは難しい。考えられる安全策は、丼椀の縁(ふち)にくちびるを当てて、スープが飛び散らないよう、丼椀の内側にすべらせてゆっくりと麺をすするしかない。

ミートソーススパゲッティの傾向と対策

昼飯にトマト風味のパスタを食べたくなった。でも、午後からは大切な商談がある。絶対に服を汚したくない。そう考えたとき、ナポリタンとミートソーススパゲッティ、どちらを選ぶべきだろうか。(おとなしく握り飯でも食ってろ、というのは無しである)

わたしは「ミートソーススパゲッティ」を選ぶべきだと思う。たいていの店では、ゆでたスパゲッティの上にミートソースをかけたものが出てくる。服を汚したくなけば、なるべく混ぜずに食べればよい。味気ない食べ方だが、きわめて合理的な判断といえる。

だが食べ方をまちがえると、ミートソーススパゲッティは、ナポリタンよりも危険な麺メニューと化す。

ひとつは、ぐちゃぐちゃに混ぜてしまった場合である。ミートソーススパゲッティを味わう上では正しいのだが、麺とひき肉が混ざり合ったとき、担々麺と同じ悲劇が生まれてしまう。

もうひとつは、フォークのオペレーションを誤った場合だ。もしも麺とミートソースを混ぜてしまっても、慎重にフォークでくるくると一口分にまとめれば、ひき肉が飛び散ってしまう事態は避けられる。

しかし、くるくる巻きをおこなわず、まるでショベルカーのごとく豪快に麺をすくって口元へ持っていく人がいる。その場合、口元に到達する前に、複雑にからみあっているスパゲッティはコントロールを失う。フォークからすべり落ちて、ミートソースのひき肉が飛び散る。服がシミになる。

鉄皿ミートソースは打つ手なし

鉄皿(鉄板)スパゲッティといえば、名古屋など中京地方の名物であると思いこんでいた。どうやら北海道にも名店があるようだ。

どさんこソウルフード : 君は甘納豆赤飯を愛せるか!』(宇佐美伸・著/亜璃西社・刊)によれば、北海道釧路市にある「レストラン泉屋」の鉄皿ミートソースが有名だという。

使い込まれた木の受け台に鎮座する黒光りした分厚い鉄皿は、これでもかというくらいに熱せられ、当然ながら上の麺やソースはジュージューパチパチ盛大な音を奏でる。

鉄皿には濃厚な油脂が層状にたまっており、この油が底の麺をさらに素揚げ状態へといざなうのだ。

何しろ、黙っているとテーブルの四方八方に油が飛び散るから、客はしばらく紙ナプキンを手前にかざして油はねを防御しなければならない。

(『どさんこソウルフード』から引用)

じつに旨そうだ。絶望的なくらいに。まさしく「レインポンチョ必須」の麺メニューといえる。

(文:忌川タツヤ)

どさんこソウルフード : 君は甘納豆赤飯を愛せるか!

著者:宇佐美伸
出版社:亜璃西社
甘納豆赤飯、豚肉のすき焼き、ザンギ、鉄皿ミートソース、カスベの煮こごり、ニシン漬け、カツゲン、ホンコンやきそば、ミルクカステーラなどなど。懐かしくもうれしい道産子のソウルフード50品あまりを、一挙紹介します。
◇釧路生まれの食いしん坊が、北海道人が舌で記憶するあの味この味を、独断と偏見と郷愁を込めて書き倒し!懐かしい昭和の食卓風景が、くっきりと甦ります。
◇北海道人の偏愛食=ソウルフードの魅力と素性を、ユーモアたっぷりにつづる、こだわりの“極私的フード記”。

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