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にゃんですと!? モフモフを愛する人類に、ネコ大虐殺の黒歴史

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日本は今、空前のネコ・ブームの只中にある。

2000年代後半の「ネコ鍋」というネコが土鍋の中にすっぽり入った動画にはじまり、ネットではネコの画像や動画が人気を集め、ネコに関する記事は鉄板ネタとしてネットメディアで重宝されている。

世界的に見ても日本のネット民におけるネコ人気は顕著で、Google Trendsによると、世界的には犬の方が比較的人気が高いのに対し、日本では圧倒的にネコ。

一般社会においても、その傾向は年々強まっている。ネコ関連本は売り上げを伸ばし、ネコだらけの島は観光地化し、日本独自の文化である「ネコカフェ」も、海外にまでその人気が飛び火している。

80年代に「なめ猫」(正式名称:全日本暴猫連合 なめんなよ)という暴走族の格好をしたネコたちの一大ブームがあったが、それが約2年という短期間で収束したのに対し、現在のネコ・ブームはかなり息の長いものになっている。

大規模なネコ狩りの黒歴史

こんなにも愛されているネコ。しかし、過去において、なんと300年以上にもわたってネコが人間によって大虐殺された歴史があることをご存知だろうか。

人間動物関係学者であるジョン・ブラッドショーによる著書『猫的感覚 動物行動学が教えるネコの心理』によると、13世紀から17世紀にかけて、カトリック教会が共同でヨーロッパ大陸からネコを駆逐しようとしたのだという。

きっかけは、1233年に出版された、ローマ教皇・グレゴリウス9世による『ラマの声』という大勅書。そこにネコ、とりわけ黒猫の正体は悪魔であると記載されていたことから、何百万匹もの猫が虐待され殺され、何十万人もの女性が魔女の疑いをかけられた。

都市に暮らす野良ネコの個体数は大幅に減り、家でペットとして暮らす家ネコの存続も危ぶまれる状況だったという。

 モフモフに宿る野生の心

愛猫家にとってはなんともショッキングな歴史だ。しかし、人のネコに対する恐怖心は、一部の人たちのあいだでは未だ根強い。同書によると、なんと5人に1人はネコが好きではなく、20人に1人は嫌悪しているのだという。犬の場合、子供の頃に噛まれたなどの特別な経験がない限り嫌いになることは少ないが、ネコの場合、そんな経験がなくても恐怖を感じるケースが多い、と。

あんなモフモフしたかわいい生き物にどうして? と思う人もいるかもしれないが、それはもしかしたら、ネコが犬よりも野性を多くその内に宿しているからなのかもしれない。犬はその精神構造を祖先であるハイイロオオカミから劇的に変化させているが、ネコは未だに野生のハンターのような考え方をしているという。

日本でも家ネコが半野良化、または野良ネコ化するケースが後を絶えない。それは、ネコが犬のように狂犬病などの危険な病気を持っていないため登録制度がなく、狂犬病予防法という法的な後ろ盾がないので保健所も野良ネコを捕獲することができない、という背景も多分に影響しているが、やはり野性が捨てきれないところがあるのかもしれない。

 ネコの未来は明るくない?

同書の著者であるブラッドショーは、ネコのある未来を憂いている。それは、家ネコの穏やかな資質を持ったネコがいなくなり、野生の資質を持ったネコばかりが残っていくのではないかということ。

現在、多くの家ネコや、地域に愛されている人懐こい野良ネコの多くは、避妊・去勢手術を受けている。しかし、人が触れることもできない野生のネコたちは、受けていない。となると、自ずと野生のネコの資質だけが遺伝していくことになる。

繁殖力の高さでも知られるネコだが、野生のネコが世界中で大量に増加した場合、またそれを大々的に駆逐するという黒歴史を繰り返さないとも言えない。

そういった悲劇を防ぐためにも、ネコの見た目だけでなく、ネコの性格に重きを置いた繁殖についても考慮しないといけない、と警鐘を鳴らしている。

長年のネコ・ブームが続く日本でもそろそろ、ネコを愛でるだけでなく、彼らを待ち受ける未来についても本格的に考えるべき時期にきているのかもしれない。

(文:ツジコ エリコ)

猫的感覚 動物行動学が教えるネコの心理

著者:ジョン・ブラッドショー
出版社:早川書房
ネコは私たちをどう見ているのか? ネコの幸福とは、ストレスとは? 人間動物関係学者である著者が、身近だけれど謎に包まれたネコの生態から進化の歴史、一緒に暮らすためのヒント、未来像までを詳しく解説する、NYタイムズベストセラーの総合ネコ読本。

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