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あの人の意外な“デビュー”エピソードで印象が変わるかも?

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人生において、「初体験」というものが何度か訪れる。いわゆる「デビュー」というやつだ。

そのなかでも、仕事に関するデビューは、わりと印象深い。

コンビニバイトから編集業界へ

僕が初めて原稿を書いたのは、アルバイト時代だ。大学を卒業後、深夜のコンビニバイトをしてぶらぶらしていたところ、友人の紹介で編集プロダクションでアルバイトをすることになった。

もともと雑誌編集に興味があったので、渡りに船ということでかなり一所懸命働いた。仕事の内容は、ライターさんとの原稿の受け渡し(当時は手書き原稿が主流だった)、カメラマンの撮影立ち会い、メーカーから借りたポジフィルム(まだデジタルカメラは影も形もない時代)の管理、貸出商品の運搬・管理、徹夜続きの編集部員のための買い出し、忘れっぽい上司のスケジュール管理などなど、雑務はほとんどやっていた。

右も左もわからずそういう業界に入ったので、とにかく毎日山のようにある仕事をこなしていくのが精一杯。何の疑問にも思わず、どちらかというと楽しいと感じながら仕事をしていた記憶がある。

“原稿デビュー”は写真のキャプション

アルバイトを始めて半年以上が経過したとき、僕に突然デビューの声がかかる。

雑誌の校正紙が印刷所から上がってくると、誤字脱字や表記ミスなどのチェックを行う。僕は、たまに校正紙を見ることはあったが、基本的にはちゃんとした編集者がやる。当時は、アルバイトがそんな重大な仕事はさせてもらえなかった。

いつも通り、大きな作業机に校正紙を並べて編集者がチェックしている。そのときは、僕も校正を見ていた(校正と言っても、指定した文章がちゃんと入っているか、写真の抜けはないかといった機械的な作業だが)。

そのとき、写真の下にあるはずのキャプションがないことに気がついた。僕は上司に「ここ、キャプション抜けてますね。元の原稿にもないからライターさんが忘れたっぽいです」と報告した。

すると上司が「じゃあ、三浦くん書いといて」と僕に言った。しかもかなり軽い感じで。

それまで、雑誌で原稿なんて書いたこともなく、まさかこんな時間のないときにキャプションを書けだなんてむちゃくちゃ言うわと思ったが、字数なんて50文字くらいのもの。とりあえず書いてみるかと、原稿用紙に線を引いて手書きで書いてみた。

当時やっていたのはファッション誌。確か、あるブランドの服を来た女性モデルが写っている写真のキャプションだった。どんなコンセプトの服なのか、資料が手元になくわからなかったので、ブランド名の由来となった言葉を絡めて、抽象的な文章にしたように思う。

時間にしたら、10分か15分くらいだと思うが、なんとか書き上げて上司に見せる。上司は「あ、いいんじゃない?」と軽い返事をした後、その原稿をそのまま校正紙にくっつけていた。

その後、雑誌が発行されると、ちゃんと僕の書いたキャプションがそのまま掲載されていた。当時は手書き原稿だったので、手書きの文字が活字になるということに感動した覚えがある。

これが、僕のライターデビューだ。その後、雑誌や書籍の編集をし、今はライターとカメラマンをやっている。それもこれも、あのキャプションが始まりだったのだ。

あの人の意外なデビュー作!?

大発掘!「幻のデビュー作」』(話題の達人倶楽部・著/G.B.・刊)には、芸能人やミュージシャンなどのデビューにまつわる話が掲載されている。今は大御所となった人たちも、デビュー時には苦労をしていたり、ひょんなことからその道に足を踏み入れたり。人生とはおもしろいものだ。

例えば、『シコふんじゃった』や『Shall we ダンス?』で有名な周防正行監督のデビュー作は、ピンク映画の『変態家族・兄貴の嫁さん』であるし、人気作家の山田詠美は小説家の前に漫画家でデビュー。しかもデビュー誌は『漫画エロジェニカ』だ。

俳優の高嶋政伸は、学生時代の借金を払ってもらう代わりに父親である高島忠夫からオーディションを受けるように言われたから俳優になったというし、アメリカのロックスター、ブルース・スプリングスティーンはデビュー時に「ディラン2世」というプロモーションをされたおかげでアルバムがまったく売れず、日本での発売は2年後になったなど、人生いろいろだなと思わせるエピソードが満載だ。

これを読むと、偉大な人というのは、人生の偶然や逆境をすべて味方につけて生きているのだなと思う。

テレビに出ているあの人にも、会社でふんぞり返っているあの上司も、必ず「デビュー」したときがある。そのエピソードを聞くと、その人の見方が変わるかもしれない。一度、聞いてみてはいかがだろう。

(文:三浦一紀)

大発掘!「幻のデビュー作」

著者:話題の達人倶楽部
出版社:G.B.
「処女作にまさる傑作はない」。手塚治虫、スピルバーグ、安室奈美恵、ビートたけし、現在揺るがぬ人気を博している著名人たちも、そのデビュー時を探れば意外な素顔が浮かび上がってくる。本書では、作家、俳優、歌手ら時代のトップランナーたちの貴重なデビュー作と、それにまつわるエピソードを紹介する。今や幻と化しつつある“お宝”の数々をとくとご覧あれ!

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