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世界一の美食の街、サン・セバスチャンに続け! 尾道は”ピンチョス”で街おこし

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スペインのバスク地方、フランス国境に近いサン・セバスチャンは世界中から美食家が集まる“おいしい街”として有名だ。星のあるレストランも多いが、多くの観光客のお目当ては、街中に数百件もあるバルで食べられる“ピンチョス”。

ピンチョスとは串に刺さったつまみや料理のことだが、串に刺さってなくパンの上に具を乗せたもの、小皿料理も今ではピンチョスと呼ばれるようになっている。

バルで飲み食い、談笑するのが最高の幸せ

本場の人気バル直伝! ピンチョスレシピ』(海豪うるる・著/PHP研究所・刊)によると、サン・セバスチャンがピンチョスで有名になったのは、飲み食いしながら談笑するのが最高の幸せというこの街の人々が、それを世界中の人と共有できないかと考えたのが発端だったという。実現できた理由のひとつとしてあげられるのはフランスで修行をした料理人たちが街に戻ってきたからだそう。

有能なシェフたちは、今の時代に合わないと影をひそめていた伝統的なレシピをいかしつつ、そこにもうひと工夫加えた新しいレシピの開発にも取り組みました。そして、「1、2軒の星つきレストランがあるより、おいしいものが食べられるバルが100軒あったほうがいい」と考え、ひと昔前までは門外不出だったレシピを共有化しました。それにより、開発した料理のレシピはバルにまで広がりを見せ、発展を促し、さらには味の継承につながるという効果も生み出しました。

(『本場の人気バル直伝! ピンチョスレシピ』から引用)

ちなみに、レシピ公開に反対したシェフはひとりもいなかったそうだ。スペイン・バスクのシェフたちはなんと寛容なことか。

尾道は日本のサ・セバスチャンになれるか?

さて、サン・セバスチャンの姉妹都市は香川県丸亀市だが、それとは別に、サン・セバスチャンのこの成功に続けと手を挙げたのが広島県尾道市だ。湾があり背景に山があり地形的にもサン・セバスチャンと似いて、また海の幸、山の幸が豊富なところも同じということで尾道市では今、“食”での地方創生を目指している。平成27年度から進められている『新開BISHOKU(尾道の食・美食)×観光プロジェクト」がそれ。

その一環として“第1回尾道ピンチョス認定コンテスト”が現在進行形で行われている。尾道の食材を使ったオリジナルピンチョスを公募し、書類選考を経て、来る926日には実食コンテストが予定されている。上位5作品は飲食店でメニュー化されるそうだから、ピンチョスを味わいに今後、尾道を目指す人はきっと増えていくだろう。

家庭で気軽にピンチョス・パーティー

さて、本書では料理研究家である著者がサン・セバスチャンを実際に訪れ、人気のバルから伝授されたレシピを再現している。バルの紹介も合わせて載っているので、サン・セバスチャンの食の旅行ガイド本としても使える。

いくつかを紹介してみよう。

バル・ゴイサルギ えびの串焼きこのバルの名物ピンチョスでえびのぷりぷり感をさっぱりソースで味わう。

バル・サン・マルシアル ビッグコロッケコンクールで受賞歴があるピンチョスで、チーズ、生ハム、豚肉入りコロッケ。

バル・スポルト やりいかのソテーパセリソース旧市街の有名店のやりいかピンチョス。軽やかな味わいのひと皿。 

バル・ベルガラ 小いかのあめ色玉ねぎのせ新しいピンチョスを生み出したパイオニア的老舗バル。じっくり炒めた玉ねぎが最高の調味料。 

メソン・マルティン いかとえびのグリルと生ハム魚介と生ハム。スペインらしいよくばりピンチョス。

この他にも多くのバルの名物ピンチョスがずらりで、どれもこれも、たまらなくおいしそう!

また、日本の食材のはんぺん、明太子、納豆、千枚漬けなどを生かした著者のオリジナルレシピも多く紹介しているので、この本があれば誰でも簡単に家庭でピンチョスが楽しむことができそうだ。

バルで結婚式の前夜祭

私はサン・セバスチャンには一度だけ行ったことがある。今から15年も前のことで、当時はパリの語学学校に通っていて、クラスメイトにサン・セバスチャン出身のヴァージニアという美女がいた。そして、彼女が同郷の男性と結婚することになり結婚式に招かれたのだ。

訪れたのは初夏だったが、ラ・コンチャ湾の海岸を囲むように広がる街は美しく、さすがヘミングウェイの『日はまた昇る』の舞台のひとつとなった街だと思った。

結婚式の前夜には旧市街に繰り出したが、そこかしこのバルからおいしそうな匂いが漂っていた。ヴァージニアは行きつけのバルに私たちを連れていき、海の幸、山の幸のピンチョスをテーブルいっぱいに並べて大いに飲んで食べて笑った。ピンチョスはどれも絶品で、何回もおかわりを注文したくらいだった。

バルの中はとにかく賑やかで、フランスにはない気さくさや陽気さ、温かさに満ちていた。

ところで、スペインの夜はとても遅い。翌日の教会での結婚式は、たしか1830分からだったし、市内のホテルに移動して披露宴のアペリティフがはじまったのが21時すぎ。そして、ようやくディナーがはじまったのは0時近くで、まさに真夜中の夕餉だったのだ。そして披露宴が終わったときには夜が明けていた。が、ヴァージニア曰く、それがスペイン時間だということだった。

日本人にはバルのはしごがおすすめ

スペインには昼寝の習慣がまだまだ残っているので、夕食の時間が遅い。レストランの開店時間も早いところで21時近くで、賑わいをみせるのは23時というのが普通だ。夕方からの時間は、皆バルで飲んで、ピンチョスをちょっとつまんで、という習慣になっている。

我ら日本人の夕食が19時頃というのは、スペインの人たちからするとお子様時間だそう。が、私などはレストランが開くのをとても待ってはいられない。そこで、おすすめなのがバルのはしご。

著者の海豪さんもこう書いている。

カウンターに自分の場所を確保したら、飲みものとピンチョスを1~2種類注文。ひとつのバルではこのくらいにしておくのがおすすめです。そうすれば、本場流にバルをいくつか巡ることができますから。

(『本場の人気バル直伝! ピンチョスレシピ』から引用)

そう、いろんなピンチョスを味わいながら、お腹を満たしていけばいいのだ。

こうやって書いていたら、たまらなくピンチョスが食べたくなってきた。サン・セバスチャンにまた行きたい! あるいは、日本国内で味わうなら尾道もいいかも!

(文:沼口祐子)

本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ

著者:海豪うるる
出版社:PHP研究所
ピンチョス発祥の地といわれ、世界の美食家たちが集まる街サン・セバスチャン。スペイン・バスク地方にある小さな街の人気バルから教わったレシピとアイデアレシピを紹介します。ピンチョスとは、もともとスペイン語で、「串、楊枝、突き刺すもの」という意味で串に刺さったつまみ(フィンガーフード)のことを呼んでいました。今では、バゲットに具をのせたものや、小皿料理のこともピンチョスと呼んでいます。
本書では、「串刺しタイプのピンチョス」「パンのせタイプのピンチョス」「小皿のせタイプのピンチョス」「温かいピンチョスと冷たいピンチョス」といった人気バルの人気レシピを中心に紹介。また、「バルの巡り方」「バルでの過ごし方」「バルのお酒事情」「朝昼夜のバルの使い分け」といった本場のバルで使えるお役立ちコラムも掲載しています。ちょっとしたホームパーティにもぴったりなピンチョス。ご家庭でもピンチョスを、ぜひ楽しんでみてください!

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