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能年玲奈と戦艦大和の意外な共通点とは?

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最近、にわかに世間の注目を集めた映画がある。『この世界の片隅に』(監督:片渕須直)というアニメーション作品だ。のん(元・能年玲奈)がアニメ映画の主演声優をつとめることが電撃発表された。ついに芸能活動を再開するというワイドショーのニュースでご存じの方も多いのではないだろうか。

原作コミック『この世界の片隅に』(こうの史代・著/双葉社・刊)は、軍港のある広島県呉市に嫁いだ女性の視点から描いたファミリードラマだ。太平洋戦争のまっただ中でありながら、明るさとほほえみを絶やさずに毎日を生きていた家族の日常を描いている。

当時の広島県呉市には海軍の後方拠点(鎮守府)があったので、『この世界の片隅に』本編のなかでも日本海軍の艦艇がいくつも登場する。映画の予告映像を観ると、在りし日の戦艦大和のすがたもあった。

原作コミックを読んでみると、わりと頻繁に艦艇シーンが登場する。

「見てみい 巡洋艦じゃ ありゃ愛宕…摩耶かのう?」
「大きいですねえ」
「むこうは駆逐艦雪風じゃろうか」

(『この世界の片隅に』から引用)

軍の事務官である夫とその妻の日常会話だ。ちなみに、のんさんが演じる「すず」の幼なじみは重巡洋艦青葉の乗務員だ。「戦艦」の役割は何となくわかる。搭載している大砲で敵を攻撃するのだろう。しかし、「巡洋艦」や「駆逐艦」とは何のための艦艇なのだろうか?

知りたい。そんなときには図鑑が役に立つ。『超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑』(歴史群像編集部・編/学研プラス・刊)には、折り込みの特大カラーイラストやスケールモデル写真や年表図解が42点も付属している。さきほどの「愛宕」や「摩耶」などについても調べることができる。

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巡洋艦とは何か

一つには艦隊決戦の前哨戦において、偵察艦隊同士の夜戦も含む主戦で主力となること。また一つには、空母決戦を行う空母部隊の護衛艦としての役割である。

(『超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑』から引用)

作中の人物が「愛宕……摩耶かのう?」と迷いをみせたのは、この2隻が「高雄型重巡洋艦」と呼ばれる艦艇だからだ。つまり基本設計が同じなので似ている。のちに改装することにより差異が生じるので、違いを見分けることができた。

高雄(一番艦)、愛宕(二番艦)、鳥海(三番艦)、摩耶(四番艦)ともに1932年に就役している。『超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑』には、高雄型巡洋艦の三番艦である鳥海(ちょうかい)のフルカラー全体図を収録している。

駆逐艦とは何か

ワシントン条約の制限下、夜戦の中心兵力となる駆逐艦は、新型艦の整備が最も精力的に進められた艦種の一つとなった。
(中略)
当時の英米の標準型駆逐艦に比べて、砲雷装で勝るだけでなく、軽巡に劣らぬ優れた航洋性能と他国駆逐艦と同等以上の高速性能を持つ特型駆逐艦は、まさに理想の駆逐艦といえる艦であった。

(『超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑』から引用)

駆逐艦の英語表記はDestroyer(デストロイヤー)だ。魚雷や爆雷によって敵潜水艦をアグレッシブに撃破する。戦艦や空母などの主力艦艇を守るはたらきをするものだ。

『超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑』には、陽炎型駆逐艦のフルカラーイラストが収録されている。なかでも八番艦の「雪風」は、いくつもの海戦に参加して戦果をあげながらも終戦後まで生き残った奇跡の駆逐艦として知られている。

大和型二番艦「武蔵」について

アニメ『宇宙戦艦ヤマト』でも有名な戦艦大和だが、艦級は「大和型戦艦一番艦」という。巡洋艦や駆逐艦と同じく、大和型にもまったく同じ設計と規模をもつ二番艦が存在する。戦艦武蔵だ。2015年3月には、マイクロソフト共同創業者の大富豪ポール・アレンによる沈没した戦艦武蔵の発見が話題になっていた。

「大和」のほうに注目が集まりがちだが、じつは「武蔵」にも面白いエピソードが多い。入門編としてオススメなのが、吉村昭『戦艦武蔵』(1966年刊)という小説だ。長崎県の三菱重工造船所で生まれてからレイテ海戦で沈没するまで……つまり戦艦武蔵の生と死を描いている。

断然おもしろいのは、造船所でのエピソードだ。呉の海軍施設では戦艦大和が建造されていた。ほぼ同時期に大和型二番艦を造るために、民間企業である三菱重工業が選ばれた。しかし、長崎造船所には世界最大級の戦艦武蔵を収容できるほどの船渠(ドック)が無かった。

そこで長崎造船所では、既存のものを補強した台座(船台)を使って戦艦武蔵を建造することにした。そうなると「進水作業」が問題になる。完成したあとに台座から海へ滑らせるときに、もしも途中で止まったり転倒してしまえば巨額の費用がムダになってしまうからだ。チャンスは1度しかなかった。そのほかにも、対岸にあるイギリス・アメリカ領事館から造船所が丸見えという問題があった。どのような方法で2年間も機密を守り抜いたのか? 戦艦武蔵は当時の日本にとって最大の切り札であった。失敗は許されない。技術者たちはどうやって困難を乗り越えたのか? まさに「プロジェクトX」を観ているような興奮を味わえる長編小説だ。

吉村昭は『三陸海岸大津波』(1970年刊)を手がけた作家としても近年クローズアップされている。さらに『関東大震災』(1973年刊)という著書もある。歴史は繰りかえす。二度あることは三度ある。偉大な作家は、死してなお未来を生きる者たちにヒントを与えてくれる。

(文:忌川タツヤ)

超ワイド&精密図解 日本海軍艦艇図鑑

著者:歴史群像編集部(編)
出版社:学研プラス
太平洋戦史シリーズ約70冊ほか、歴史群像が20年にわたり刊行してきた戦史・艦艇関連ムックから素材を厳選、新規素材も加えて再構した決定版! 4P大や観音開きの超ワイド精密イラスト&スケールモデル図解全42点を始め、ビジュアル満載の永久保存版!

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