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テレビ・映画の名探偵たちとは違う、リアルな探偵たちの仕事っぷり

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欧米作品ならポアロ、マグナム。日本作品なら金田一耕助と工藤俊作。それぞれの世代のそれぞれの人が異なる意見を持っていると思うが、筆者の場合、古今東西のベスト名探偵を挙げるなら、この顔ぶれになる。
ディテクティブ・ストーリー。直訳すれば探偵物語。ジャンル全体としては警察官や保安官、そして最近では監察医まで含んで考えるのが普通のようだが、筆者としてはしっかりと一線を画したい。

オリエント急行殺人事件

『オリエント急行の殺人』(筆者が小学生の時に読んだ文庫版はこのタイトルだった)でエルキュール・ポアロを知り、シリーズ物を読み進める中で1974年のハリウッド映画版も見た。この映画でポアロを演じたアルバート・フィニーはイメージぴったりで、少なくとも外見的な完成度は完璧だったと思う。原作者のアガサ・クリスティもびっくりだろう。

その後1978年の『ナイル殺人事件』(原作本のタイトルは『ナイルに死す』)ではピーター・ユスティノフという俳優がポアロを演じたのだが、クリスティの設定では身長163センチであり、恰幅が良すぎて、あまりにもイメージとかけ離れていた。結局、ポアロの大男ぶりばかりが気になって、最後までストーリーに入っていけなかった。アルバート・フィニーとは正反対の意味で、クリスティもびっくりしたに違いない。

横溝ワールドへの入り口

横溝正史作品を集中的に読んだのは、小学校6年生の夏。石坂浩二さんが金田一耕助を演じた映画版『犬神家の一族』(市川崑監督:1976年)は衝撃的だった。全体的に青っぽい感じがする画面がとても多く、独特な響きのダルシマーという楽器が使われた印象的なテーマ音楽も、おどろおどろしくも切ない映画の世界観を端的に表現していて、今でも耳に残っている。

原作においても、映画においても、金田一耕助という探偵はどこか文学者の匂いをまとっていて、犯人を前にして問い詰めていく時の言葉遣いも特徴的だ。

ベスパをバカ売れさせた探偵

アフロヘアにソフト帽。黒いスーツに赤いシャツと白いネクタイを合わせ、ベルトじゃなくてサスペンダー。移動手段はイタリア製スクーターのベスパ。愛用のサングラス、レイバン・ラウンドメタルは手放さない。カルティエのライターは炎が10センチほど上がるように設定してある。スタイリッシュな外見とエキセントリックな性格が同居した工藤俊作というキャラクターは、故松田優作さんの代表的なハマリ役として認知度がきわめて高い。

放送開始後すぐに高い視聴率が出て、ベスパをはじめとする小道具の売り上げもうなぎ上りになったという話も残されている。

スタイリッシュなハワイアン

元海軍士官のベトナム帰還兵という設定のトーマス・サリバン・マグナムがオフィスを構えるのはハワイのオアフ島。派手なアロハシャツと赤いフェラーリがトレードマークの、モテモテのタフな奴。トム・セレックが主演した『私立探偵マグナム』も、忘れがたい名作だ。後発の刑事ドラマ『マイアミバイス』にそのままつながる番組コンセプトをはじめ、なにせおしゃれだった。嘘か本当かはわからないが、この番組を見てハワイ移住を決めるアメリカ人中年男性が激増した年があったという話もある。

カラフルなキャラクターが多い、テレビや映画で活躍する探偵たち。もちろん、実社会で探偵を生業としている人たちもいるわけだが、こうした人たちも、ここで紹介した名探偵たちほどではないにせよ、それなりに派手な生活を送ってるんじゃないだろうか?

探偵たちの実生活

そんな疑問に答えてくれるのが『実録! 探偵の世界』(大沢知己・著/イースト・プレス・刊)だ。この本の特徴は、とにかくリアリティに徹底していること。

実際に体験したエピソードを交えて、どんな依頼者やターゲットとめぐり合っているのかだけでなく、プロとして恥かしい失敗談も紹介しています。

『実録! 探偵の世界』より引用

こういうスタンスから始まるため、話はいやが上にもリアルで具体的になる。

浮気現場の修羅場模様、ときにヤクザに捕まり、ときにストーカーの手先になるなど、正義の味方とは限らない、「本物の探偵」の現実を知ることができるはずです。

『実録! 探偵の世界』より引用

やっぱり、ベスパやフェラーリを乗り回したりする本物の探偵さんはいないようだ。それに、取り扱う事件の内容は一般人が想像するよりはるかに陰惨で悲惨なものが多いという事実も指摘しておきたい。

飲み会で職業が探偵であることを明らかにするとモテるが、結婚となると途端に敬遠されるなんていう〝探偵あるある〟話なんかもリアリティのひとつ。

どうやったら探偵になれるの?  勤務時間や給与体系はどうなってるの? どんな調査をしてくれるの? どのくらいお金がかかるの? 業界をまったく知らない人間が抱きがちなこうした疑問にも丁寧に答えてくれている。

カッコいいだけじゃない。いや、むしろカッコ悪いことばかりだ。でも、言葉にできない魅力を感じる。
それが探偵という仕事。

(文:宇佐和通)

実録!探偵の世界

著者:大沢知己
出版社:イースト・プレス
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