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ピーターラビットのお父さんは事故に遭い、○○にされた

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1995年1月17日、私は神戸の自宅で地震に遭遇した。後に、阪神・淡路大震災と呼ばれるようになった地震だ。
震度7の揺れはすさまじく、我が家の食器は壊滅状態だった。 上等なワイングラスもぐい飲みも、洋食器のセットも大半が割れた。 けれども、悲しくはなかった。悲しんではいけないと思った。 お子さんを亡くした方だっているのだから・・・。

ピーターラビットのミルク入れが割れてしまった日

ただ、ピーターラビットの絵がついたマグカップとミルク入れが壊れたのは、心底、残念だった。 割らないように、大事に使っていたのに・・・。
「よりによって、一番好きな食器を割らなくたっていいのにさ」と、私は地震の理不尽さにふてくされ、そして、怖くなった。 大事なものを狙い撃ちにされているような気がしたのだ。

意外や意外。ピーターラビットは怖いお話

自分がいつからピーターラビットが好きになったのか、よく覚えていない。
おそらく、大学生のとき、英語の絵本で知ったのだと思う。
周囲の人は、ピーターに夢中になる私を見て、「へぇ、案外、メルヘンチックね」と、驚いていたが、それは大きな間違いだ。 ピーターラビットは、綺麗な挿絵と簡潔な文章で知られる絵本で、その意味ではメルヘンチックかもしれない。
しかし、その実態は、子供に読んでやっていいものか迷うほど怖い物語だ。
【対訳】ピーターラビットシリーズ 5巻セット』(ビアトリクス・ポター・著/ゴマブックス・刊)を読むと、ピーターが、ほんわかした毎日を送っているわけではないとわかる。
青い上着を着て、いたずらばかりしているが、実は死と隣り合わせの危険な毎日なのだ。

寝かしつけには不向きな物語

ピーターのお母さんとは違い、私は不真面目な母親だった。
今や、私の息子は34歳になり、結婚もしている。あやまったところで、何の役にも立たないが、思い出してみると、幼い息子を寝かしつけるとき、私は彼の趣味など考えず、そこらへんにある本を読んでいた。
料理のレシピやらウィスキー工場を巡る旅の本など、自分が読みたいものを選んだ。身勝手な母親だったのだ。
けれども、ピーターラビットの物語は一人でいるときに読んだ。
いくらなんでも、子供には酷だと思ったからだ。
こんなもの読み聞かせたら、子供は震えあがり、眠れなくなるに違いない。

ピーターのお父さんは食われてしまった

とりわけ、ピーターの父親に関するお話は、悲しく、怖い。

ある朝、おかあさんが言いました。「さぁ、お前たち。野原や森の道で遊んでおいで。でも農家のマグレガーさんの畑にだけは行っちゃいけませんよ。おまえたちのおとうさんは、あそこで事故にあって、マグレガーさんの奥さんに肉のパイにされてしまったんですから」

(『【対訳】ピーターラビットシリーズ 5巻セット』より引用)

事故ですって?
パイにされただと?
それって、早い話が食われちゃったってことじゃないの!!
私は驚きのあまり、「これ、ホントに童話なの?」と、うめいた。

いたずらがすぎるピータラビット

ピーターは私をハラハラさせてばかりいる。
マグレガーさんの畑にもぐりこみ、レタス、さやいんげん、ラディッシュまで、食べてしまうのだ。 その畑は、他でもない父親がパイにされたマクレガー家のものだというのに。
それなのにピーターは我関せず、胸焼けするほどたくさん食べる。
思わず、「ピーター、そりゃあ、食い過ぎよ。泥棒してるとわかってるの?つかまったらどうするの」と、金切り声をあげたくなる。

Bunkamuraに行けばピーターに会える

今年はピーターラビットの作者、ベアトリクス・ポターの生誕150周年にあたるのだそうだ。
それを記念して8月9日から10月11日まで渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムでピーターラビット展が開催中だ。
日本で初めての大規模な原画展で、貴重な作品がたくさん展示されている。
私も見学に行き、たくさんの素描に見とれたが、一番感激したのは物語が誕生するきっかけとなったピーターという名の兎の素描だ。鉛筆で書かれた素朴な兎は、哲学者のように難しい顔をしている。 ポターは実際の兎を観察した末に、魅力的なピータラビットのキャラクターを作り上げた。
もう一つ、特筆すべきことがある。 ピーターラビット展のナビゲーターをディーン・フジオカがつとめていることだ。 彼が英語で語りかける物語にしびれ、さらにこの物語を好きになる人が増えるに違いない。

いつもそこにいるピーターラビット

21年前、私が大事にしていたピーターラビットの食器類は、地震によって木っ端みじんになった。
けれども、心の中にあるピーターまでもなくしてしまったわけではない。
『【対訳】ピーターラビットシリーズ 5巻セット』があれば、ピーターは永遠に私の中で飛び跳ねることができるのだ。
たとえ地震に遭遇しようとも、ピーターは死なず、いつもそこにいる。
これからはそう信じて生きていきたい。

(文・三浦暁子)

【対訳】ピーターラビットシリーズ 5巻セット

著者:ビアトリクス・ポター
出版社:ゴマブックス
いたずらっ子のピーターラビットとその仲間たちのお話をお得なセットにしました! かわいいイラストともに英語と日本語のお話が一緒に楽しめます。 <収録作品> 【対訳】ピーターラビット 1 ピーターラビットのおはなし ーTHE TALE OF PETER RABBITー 【対訳】ピーターラビット 2 ベンジャミンバニーのおはなし ーTHE TALE OF BENJAMIN BUNNYー 【対訳】ピーターラビット 3 フロプシーのこどもたち ーTHE TALE OF THE FLOPSY BUNNYSー 【対訳】ピーターラビット 4 こねこのトムのおはなし ーTHE TALE OF TOM KITTENー 【対訳】ピーターラビット 5 モペットちゃんのおはなし ーTHE STORY OF MISS MOPPETー

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